3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)開幕を目前に控えて、大谷翔平(22、日本ハム)欠場のショックから小久保裕紀監督(45)率いる侍ジャパンは混乱したままだ。メンバー入りしたのは菅野智之(27、巨人)、則本昂大(26、楽天)、石川歩(28、ロッテ)、武田翔太(23、ソフトバンク)、藤浪晋太郎(22、阪神)ら。各球団のエースが勢揃いした先発陣は強力に見えるが、過去の侍ジャパンと比べれば明らかに見劣りする。
王貞治監督が率いた第1回大会では、松坂大輔(36、ソフトバンク)、上原浩治(41、カブス)が活躍。原辰徳監督率いた第2回は、松坂に加え、ダルビッシュ有(30、レンジャーズ)、田中将大(28、ヤンキース)、岩隈久志(35、マリナーズ)など、錚々たる投手陣を擁した。3連覇を逃した前回も、田中と前田健太(28、ドジャース)がメンバー入りしている。
今回、過去にWBCの舞台を経験している日本人メジャーリーガーがどれだけ参加するかがカギとなっていたが、昨年11月に行なわれたメキシコ、オランダとの強化試合以降は国内組投手陣のみ。しかも4試合で29失点を献上する“崩壊ぶり”だった(大谷は打者としてのみ出場)。
「小久保監督は、『マエケンやマー君、岩隈が出場できれば解消できる』という構想を持っていた。メジャー投手に先発を任せ、手薄な抑え役に大谷を回すと示唆していましたが、すべて実現しませんでした」(NPB担当記者)
プロ野球データに詳しいジャーナリスト・広尾晃氏は、実際に大谷が抜けた際の侍ジャパンの投手力がガタ落ちであることはデータの上でも明らかだと指摘する。
「MLBには、投手の個人防御率とリーグ平均の防御率を比較して、そのピッチャーが平均よりどれだけ失点を防ぐ能力があるかを示すPR(※)と呼ばれる指数があります。これを昨年のパ・リーグに当てはめてみると、最も優秀なのが、大谷の28.5という数字でした。
【※Pitching Runsの略。算出方法は、投球回×(リーグ平均防御率-個人防御率)÷9。防御率と違い投球回も加味するので、先発投手の総合的な指標として用いられる】
PRは投球回が多いほど高くなるので、故障で一時打者に専念し、規定投球回に達しなかった大谷がこれだけの数字を残しているのは、投げた時の内容がいかに素晴らしかったかを示しています」