千代田区長選挙で圧勝し、自信満々で血色のいい小池百合子東京都知事とは対照的なのが、安倍晋三首相だ。なんだか最近、やたらと顔色が悪くないか。その理由を調べると、思わず同情したくなるほどの苦しい状況が見えてきた。
国会答弁では野党の批判を挑発を交えてかわし“意気軒昂”なところを示し、念願のトランプ新大統領との日米首脳会談も実現した。だというのに、首相の表情から憂いが消えない。
「何から何まで俺に押し付けやがって。まともな仕事のできる大臣はいないのか」──端から見ると、そんなボヤキを腹の底にためこんでいるような顔つきなのだ。
「総理はこのところ我慢に我慢を重ねている」
そう明かすのは官邸の安倍側近の1人だ。米・トランプ政権の始動で日本は外交・安全保障から、通商政策、金融政策まで大幅な転換を求められている。
安倍首相は訪米前の2月3日にトヨタ自動車の豊田章男社長と会食して、トランプ政権の“日本車叩き”にどう対応するかを協議した。同じ日には、米国から来日したマティス新国防長官と会談。「尖閣諸島防衛は日米安保条約5条の適用範囲だ」という言質を自ら引き出した。
「通商問題は世耕弘成・経産相の仕事だし、マティスだって、本来なら稲田朋美・防衛相が先に会って日米同盟堅持で話を付け、総理は表敬訪問を受けるだけで細かい話はしないもの。大臣が頼りないから全部総理にしわ寄せがきてストレスがピークに達している」(同前)
首相が大臣たちに不安を感じるのも無理はない。マティス氏はアフガン戦争で「マッド・ドッグ(狂犬)」の異名を取った筋金入りの軍人(元海兵隊大将)だ。そのマティス氏を相手に、国会で靖国不参拝を追及されて涙ぐんだ“泣き虫朋ちゃん”が渡り合う姿は想像しにくい。北方領土をめぐるロシアとの経済援助交渉で成果をあげることができなかった世耕氏に、ロシア以上の無理難題が予想されるトランプ政権との自動車交渉はいかにも荷が重そうだ。