指揮者に欠かせないのは、作曲家の意図を汲み楽曲を理解するため、徹底的に楽譜を読み込む作業だ。そのために膨大な勉強時間を割く。それは、どんなに経験を重ねようと変わらない。
「ああ、こいつは楽譜を読み込んでいるなとオーケストラが感じてくれれば、彼らは僕に心を開いてくれる。だから、勉強不足で行くことは一番まずい。一つの曲から音楽の喜びみたいなものが見つかっていない状態で指揮台に立つのは、すごく恥ずかしいことなんです。
いままでその喜びが見つかってきたから評価を受けたし、佐渡裕というブランドのスタンプを押せてきたんだと思う。でも、うまくいかなかったコンサートというのも自分の中でありますよ。オーケストラと指揮者は生身のものなので。まあ、打率としては高いほうなのかもしれませんけど」
【プロフィール】さど・ゆたか/1961年生まれ。京都府出身。京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾に師事。1989年にブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し、プロデビュー。パリ管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団など欧州の名門楽団に多数客演を重ねる。2015年オーストリアで108年の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任。国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監督、シエナ・ウインド・オーケストラの首席指揮者を務める。昨年には絵本『はじめてのオーケストラ』(絵/はたこうしろう・1500円+税・小学館)の原作にも挑戦した。
今後の国内公演は、4/14~29東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ツアー(秋田、北上等12公演)、7/14~23オペラ「フィガロの結婚」(兵庫県立芸術文化センター)、10/21~29ケルン放送交響楽団「運命」「未完成」ツアー(兵庫、大阪、京都、名古屋、東京等8公演)。詳細は佐渡裕オフィシャルファンサイトhttp://yutaka-sado.meetsfan.jp/
撮影■初沢亜利 取材・文■一志治夫(文中敬称略)
※週刊ポスト2017年2月24日号