トヨタやソフトバンク、ユニクロなどが日本を代表する有力企業であることは間違いない。だが、これらの企業は技術革新の早さやトップダウンによる時代適応力の高さの半面、「脆弱性」を内包すると指摘するのは経済ジャーナリストの福田俊之氏だ。
「今後、一部の途上国を除いて自動車消費が減少していくなか、トヨタのように特定の分野に依存した経営手法はリスクが高い。トヨタには多業種のグループ会社があり、地域社会における裾野の広さは有名ですが、自動車という基幹産業の成り行きで経営の屋台骨が左右されることに変わりはありません。ひとたび逆風が吹けば一気に暗転するのは、ソフトバンクやユニクロも同じです」
そうした局面では、様々な異業種を組み込む財閥の「安定感」が強みを発揮すると福田氏は言う。
「金融、インフラ、小売、流通など、経済のインフラを支えているのが(三菱・三井・住友などの)財閥です。100年以上生き残ってきた財閥は、年月をかけて独自のリスク分散法を培っており、単体企業よりサバイバル能力が桁違いに高い。
例えるなら、トヨタやソフトバンクは長距離をひとりで走り切るトップクラスのマラソンランナーですが、財閥は一人ひとりが襷をつなぐ駅伝です。ひとりの調子が悪くても、残りのメンバーが一丸となって補うことができ、長距離(長期)の勝負になるほど有利になる」
さらに福田氏は、巨額の国家予算に食い込める点を強調する。
「ロシアを含めた途上国で財閥の知名度は抜群で、ODAなどの資金で何度もインフラ整備、発電、資源開発などの事業を請け負ってきました。ビジネスの枠組みを越えて国際貢献の領域まで踏み込み、“公共性”というオーラをまとった財閥には、単なる営利企業と趣を異にする信用力があります」