欧米の経済誌や外交誌が、相次いで「日本の豊かさ」に注目する論文を掲載した。停滞ムード漂う世界の中で、日本だけが元気だというのだ。双日総研チーフエコノミストで、『気づいたら先頭に立っていた日本経済』(新潮新書)の著者・吉崎達彦氏が解説する。
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「もう若くないんだから、いい加減こんなところ来ちゃいかんよなあ」体重と血圧を気にしながら、それでも手を出してしまう。濃厚なスープとごつい麺、極厚の煮豚……そう、「ラーメン二郎」である。ラーメン二郎は全国に約40店舗、いわゆるインスパイア系を含めると膨大な数になり、ラーメン業界の一大勢力を築いている。
「ジロリアン」という熱狂的なファンの存在が知られ、私もそのひとりだ。二郎はすでに単なる食事としての域を超え、エンタメの域にまで達している。直接脳に訴えかけるあの炭水化物、脂質、塩分は快楽そのものといっていい。
ラーメン二郎の誕生は、日本の多様なラーメン文化の賜物と言える。ラーメン屋の寿命は決して長いものではないが、試行錯誤を重ねた味を追求するチャレンジャーが次々登場している。
最近、日本のエンゲル係数が上がっていることから「貧しくなった」との指摘があるが、「費用をかけて食を楽しむ人が増えた」と見るべきだ。日本では、食はエンタメとして楽しめるほどの多様性をもつ段階まで来ている。