零細神社は存続が難しいと言われている。一方で、全国の神社を包括する神社本庁は政界も無視できない存在感を示す。強弱両面を持つ神社界の未来について神社本庁総長・田中恆清(つねきよ)氏に話を聞いた。
──少子高齢化や過疎化で存続が危ぶまれる神社もあると聞く。そんななか神社が果たすべき役割とは何か。
田中:時代が変わっても、地域共同体の中核という神社の役割は変わりません。過疎地で氏子さんや参拝者が減り、神社の存在感が薄れてしまっているのは事実です。現在、神社本庁が包括する神社は全国で約8万社。それを約2万2000人の神職でお守りしています。
つまり1人の神職が数社の宮司を兼務しなければならない。今後はそれぞれの地域で事情を鑑みながら、場合によっては過疎地の神社を統合する、ということも必要になってくるでしょう。
──神社の減少は避けられないと?
田中:神社の減少は今に始まったことではありません。明治政府が神社の統廃合を進めた結果、全国にあった約20万の神社が、大正12年には約12万社にまで減りました。今後も過疎などの理由から統合などにより、減少する可能性があるでしょう。
けれども神社は建物だけを指すのではありません。鎮守の森は人々が生きるための生命を包含する場であり、ふだんは意識しませんが地域共同体の要です。お祭りがあれば地域の人々が集まり、共同体の繋がりを確認してきました。神社数が減っても、近隣神社が連携して地域に伝わる神事やお祭り、伝統芸能を継続することが肝要です。
──だが、初詣でしか神社に足を運ばない人も多い。神道との接点がなくなるなかで何を伝えるべきか。
田中:神社神道は明確な教義を持たない、いまでは世界的に珍しい宗教です。日本人の信仰心は生活のなかで培われ、親から子へ子から孫へと自然に伝えられてきました。平素は意識しないけれども、信仰は心のなかにあり、何かがあれば自然な形で現れる。
教義がないがゆえに神職がこう信心しなければならないと能動的に語りかけることはありません。参拝する方の思いにまかせると言ってもよいでしょう。神社には様々な立場の方々が様々な思いから参拝に来られます。多様な参拝者と神様の仲を取り持つ神職の役割は、より大きくなっています。