2月13日、北朝鮮の最高指導者・金正恩の異母兄である金正男がマレーシアの首都・クアラルーンプールの国際空港で殺害された。北朝鮮情勢をウォッチする公安関係者は、驚きを隠さない。
「東南アジアで北朝鮮の暗殺部隊が動いているという情報が昨年の春頃からあったが、まさか金正男を狙っていたとは……。金正男は投資顧問のビジネスをしており、ここ数年、マカオと香港やシンガポール、マレーシアなどを行き来する生活をしていた。マカオであれば中国の警備要員がついていたはず。監視から離れた隙を北朝鮮の工作員は狙ったのだろう」
中朝関係に詳しいジャーナリストの富坂聰氏はこう言う。
「金正男の存在はもはや中国にとって利用価値があるものではなく、本気で保護すべき存在ではなかったはず。しかしだからこそ、このタイミングであえて暗殺することには中国国内でも衝撃が広がっています」
暗殺のタイミングをめぐって情報関係者の間で話題となったのは、20年前に起きた暗殺事件と符号する点が極めて多かったことだ。北朝鮮事情に詳しいジャーナリストの李策氏が語る。
「金正日の甥で、金正男の従兄弟にあたる李韓永(=イハニョン。金正男の母である成恵琳の姉の息子)です。スイスの大学に留学後、韓国に亡命した彼は、金一族のことを書いた暴露本を出版したり、日本メディアの取材にも応じるなどした。その後、彼は韓国の友人宅前で北朝鮮の工作員2人に銃撃され、数日後に死亡した。実は李韓永が襲われた日は、金正男が殺された日からちょうど20年と2日違いの、1997年2月15日だったのです」