現在の食には、経済性、簡便性、安全、美食よりも「健康志向」が求められている。日本政策金融公庫が半期に一度、調査・発表している消費者動向調査によれば、6年前から連続して健康第一の志向が続いている。こういった意識に応える食とヒトの健康をつなげる研究が、「おいしさと健康」をめざす江崎グリコ健康科学研究所でも続けられている。その過程で見つかったのが、最強のビフィズス菌といわれるグリコ独自の「ビフィズス菌BifiX(ビフィックス)」だ。ビフィズス菌BifiXは、生きて腸まで届き、しかも腸で増えるビフィズス菌である。
「ビフィズス菌BifiXを発見したときは、極めて強い菌が見つかったなと嬉しかったですね。今は、ビフィズス菌BifiXにはどのような特長があるのか、その強さを最大限に生かす方法には何があるか、についてさらに探求しています。もちろん、これで満足せず、未知の強いビフィズス菌があるかもしれないと気にしながら研究を続けています」
江崎グリコが保有する1万株の乳酸菌・ビフィズス菌からビフィズス菌BifiXを選びだした当時を振り返るのは、江崎グリコ株式会社 健康科学研究所の西嶋智彦さんだ。
乳酸菌ではなくビフィズス菌に注目したのは、成人の腸内細菌に占める割合が乳酸菌は1%以下の一方、ビフィズス菌が約10%と、腸内に棲む善玉菌としてはビフィズス菌が圧倒的に優勢だからだ。
ヒトの腸内には約100兆個の腸内細菌がいて、その腸内細菌のバランスをよくするためには、善玉菌の割合を一定以上に維持することが健康管理に役立つ。その割合が小さくなりバランスが崩れると、肌荒れや便秘、免疫力低下を起こしやすくなる。太りやすいことにも、腸内細菌のバランスが関与している。
善玉菌と聞くと乳酸菌のイメージが強いかもしれないが、江崎グリコでは腸内細菌の割合から考え、ビフィズス菌にこだわった研究が続けられている。
ビフィズス菌BifiXの最大の特徴は、おなかの中で増えること。一般的にビフィズス菌は乳酸菌と比べて胃酸に弱いと言われていて、「生きて腸まで届く」ビフィズス菌も数少ない。しかし、ビフィズス菌BifiXは「生きて腸まで届く」どころか、おなかのなかで増えることが出来る極めて希少価値の高いビフィズス菌だ。
「ビフィズス菌は酸素に弱く、胃酸や小腸の消化液にも負けて死んでしまうものがほとんどです。そのなかでビフィズス菌BifiXは元気なまま腸まで届き、しかもそこで増えます。ビフィズス菌BifiXほど腸内で活発に増殖し、活動するものは見たことがありません。死んだビフィズス菌でも腸まで届けば効果があるという人もいますが、やはり生きたまま大腸のなかで活発に働くのが健康にとってよいと考え、ビフィズス菌BifiXを選抜しました」(西嶋さん)
ビフィズス菌BifiX摂取によって、腸の動きが活発となり排便の回数が増加し、便通が改善されることが過去の試験によって判明している。また、2015年に行われたヒト臨床試験では、肥満傾向がある被験者にビフィズス菌BifiXを摂取させると、内臓脂肪面積が減少することを確認できている。なぜ、ビフィズス菌BifiXが内臓脂肪を減らすことに繋がるのか。
「そもそもビフィズス菌は、生命活動する際に栄養源として糖質を取り込みエネルギーに変え、短鎖脂肪酸という物質を生成します。この短鎖脂肪酸が腸内で生成されると、内臓脂肪を減らしたり、血糖をコントロールするなどの効果があるということが解明されていました。それならばビフィズス菌、しかもビフィズス菌BifiXを摂ったら、より高い効果を得られるのではないかと期待して、私たちは研究を行ってきました。今回の臨床試験結果は、その仮説が証明されたものです」(西嶋さん)