戦後の第1次ベビーブームに生まれた約700万人の巨大集団「団塊世代」(1947年~1949年生まれ)が、いよいよ今年から順次70代に突入していく。彼らは高度経済成長の原動力と評価される一方、その有り余るマンパワーから「日本の不良債権」「日本衰退の戦犯」などと揶揄されてきた。
団塊世代が他の世代から嫌われる理由は、「人数で幅を利かせ、高度経済成長に乗っておいしい思いをしてきた挙げ句、バブル崩壊以降の負の遺産を下の世代に押し付けている」ということだろう。いわゆる「団塊逃げ切り批判」だ。
団塊世代にとっては、耳にタコができるほど聞かされてきた“悪口”だ。しかし、本当にそうだろうか。むしろ「一番損をしているのは団塊世代である」というデータがある。
まず、今年から70歳以上では、医療費の自己負担の上限額が大幅にアップする。経済ジャーナリストの荻原博子氏が解説する。
「『高額療養費制度』が改正され、高額療養費の自己負担の上限額がこの8月から引き上げられます。これは団塊世代が70歳になる直前に間に合わせるように法改正を行なったと見られています」
高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超える分は負担が不要になる制度である。
70歳以上で年収370万円未満の場合、外来診療の上限額が今年8月には月1万2000円から月1万4000円になり、さらに来年8月には月1万8000円にまで引き上げられる(6000円増)。
入院と外来を合わせた医療費の負担は、今年8月に月4万4400円から月5万7600円にまで引き上げられる(1万3200円増)。年収が370万円以上の場合はさらに負担が増す。
前出の荻原氏は、「2008年に導入された『後期高齢者医療制度』も、団塊世代が65歳以上、70歳になるまでに間に合わせるように行なわれた制度改正だった」という。
この制度によって、70歳以上でも医療費の自己負担率は、現役並みの所得のある人は3割負担となり、一般の70歳以上も2割負担になった。特例措置で2014年まで1割で据え置きになったが、それも団塊世代が適用範囲に入るまでと考えれば合点がいく。