日本経済の不調が長らく唱えられているが、停滞ムード漂う世界の中で、日本だけが元気だという論文を欧米の経済誌や外交誌が相次いで掲載している。双日総研チーフエコノミストで、『気づいたら先頭に立っていた日本経済』(新潮新書)の著者・吉崎達彦氏が、不思議に安定している日本がこれから取り組むべき第4次産業の拡大と、「遊民経済学」について解説する。
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日本が当面増え続ける社会保障費を工面するためには、GDPの成長が欠かせない。そこで成長が見込める新産業が必要になるのだが、私が声を大にして言いたいのが、「遊び」「エンタメ」の重要性だ。
お役所仕事のように渋々やらなきゃいけないサービス業をこれまで通り第3次産業と呼び、お客さんがニコニコしているものを第4次産業と呼ぶことにする。この第4次産業を拡大すること。これが私の提唱する「遊民経済学」の根幹だ。
その一例としてギャンブルがある。何を隠そう、私は毎週末通うほどの競馬好きだ。私は競馬などのギャンブル産業も、成長分野になると考えている。
通称カジノ法ことIR法が成立し、実現に向けて本格的な議論が始まった。カジノを含む大型リゾート施設を東京圏と大阪の2か所に設置することの経済効果は、直接的なものだけで2兆円にのぼるとみられている。依存症の問題や治安悪化などが懸念されているが、新しいものには多かれ少なかれ拒否反応は出るものである。日本的なおもてなしの精神を加味して育てていけば、ギャンブルも有望な成長分野になるだろう。