間もなくテレビCMを超える市場になると言われるネット広告だが、その速すぎる進化に業界がついていけないのか、思いがけない大トラブルが世界的に起きている。英国ではテロ組織を支援する動画や過激サイトへの広告出稿問題(自動的に掲載されてしまう)が国会論争に発展し、日本企業の名前も取り沙汰されている。プログラマティック広告というユーザーの閲覧履歴に応じた運用が進んだ弊害である。
これが、民間企業におけるシステム上の不備として片付けられないのは、結果として広告費がテロ組織などに流れている可能性があるからだ。ネット広告事情に詳しいジャーナリストの伊藤博敏氏が言う。
「タイムズ報道によれば、グーグルが運営するYouTubeにアップされたネオナチ支援団体や反ユダヤ主義を掲げる団体の動画に、企業広告が上がっていました。グーグルの場合、動画広告は平均1000回の再生につき、800円前後がコンテンツ提供者にわたる。その原資はもちろん企業からの広告費です。
人気の高いコンテンツでは月間100万回以上再生されるものもあり、80万円の収入が入ることになる。複数の注目を集める動画をアップし続ければ、それらの団体は、世界的企業から多額の広告費を受け取ることになる」
そのため英国では、この問題を広告システムの過失とせず、企業の姿勢を問う声が強まっている。