1973年に公開された映画『仁義なき戦い』(深作欣二監督)は、公開から40年以上を経た今も、ソフト化作品の人気がまったく衰えていない。映画史上に残る名作の中でも抜群の存在感を発揮した大友勝利を演じた千葉真一が、同作を振り返る。
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深作欣二監督──僕は敬意を込めて「キンジ・フカサク」と呼んでいますが、深作監督の口グセは「千葉ちゃん、映画はジャズなんだよ。大事なのはリズムだ、観客を飽きさせちゃダメだ」でした。だから『広島死闘篇』の大友勝利も、とにかくセリフを切ることなく、一気にたたみかけてやろうと。
実は最初、北大路欣也ちゃんが演じた山中正治が僕の役だったんです。脚本の笠原和夫さんは、その前に『日本暗殺秘録』(1969年)で僕が演じた小沼正のヤクザ版として山中を描いた。だから僕も山中のセリフは完全に入っていた。
それを欣也ちゃんが「大友はできない」と言ったから、クランクイン直前で役が入れ替わった。実は彼とは役柄交代は2回目。そりゃあ、向こうは市川右太衛門さんの御曹司で、こっちは雑草。それでも2回目となると「勝手にしやがれ!」と思ったけど、ふと考えたらあの深作欣二が違うと思ったら絶対に曲げるわけがない。
ははぁん、これは監督の陰謀か……そうか、それならやってやろう。そう思って改めてシナリオを読んでみたら「何じゃこれ!」なわけです。山中とは180度違う役柄で、欣也ちゃんが役者として降りたのもわかる(笑い)。
エゲツないセリフばかりだけど、読んでいくと段々と「これ、おもしろいな」と役柄が自分の中に入っていく。深作監督も、山中よりも大友に気持ちが入っていることもわかった。