児童虐待が社会問題として世間の大きな関心を集め、虐待の現場を知るケースワーカーなどから「虐待する親も、その親から虐待を受けていたケースが目立つ」と言われるようになった。もうひとつ、大きな声では語られないが、連鎖があると指摘されるものがある。ライターの森鷹久氏が、子供への性犯罪によって生まれる「負の連鎖」についてリポートする。
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20歳から66歳までの男児ポルノ愛好者6人が、神奈川や広島、埼玉など7県警によって逮捕、追送検された。当局によれば、被疑者6人の中には家庭教師のアルバイト経験者や現役教師なども含まれており、160人以上の被害者が存在し、10万点を超す男児の裸などの写真や動画が押収されたという。似たような事件は昨年9月にも関西地方で起こっており、計5人の男が逮捕され、こちらも100人以上の男児が被害に遭っている。
教職者などが手を染めた悪質この上ない犯行は、発生直後こそテレビ新聞が凄まじい勢いで報じるものの、犯人のおぞましさばかりがクローズアップされ、被害児童達を本当に救うためには何が必要なのか、視聴者や読者に訴えるような取り上げられ方はなされない。その現状に、過去の事件から何も学べなかったのかと暗い気持ちになった。
今から十年以上前に起きた、ある痛ましい男児殺害事件には、子供の性犯罪被害への救済が不十分だったことが遠因ではないか、と思わせる事情があった。加害少年は過去、性犯罪の被害者でもあったのだ。もし、彼が過去に遭った性犯罪との向き合い方を覚えて成長できていたら、殺人に至るようなゆがんだ衝動を内面に抱えることはなかったかもしれない。
「被害男児であるA君は、加害男児Xに連れ去られ性的ないたずらを受けました。動揺したA君が騒ぎ出すと、XはA君を殺めた。しかしその後、X自身もかつて性的ないたずらを受けた経験を持つ被害者だということが周辺取材で判明したのです。もちろん当局がそれを認めた所で、事件と結びつけて書くことはできません。警察によって”別件”だと見做されれば、事件の遠因として書くことは許されない」(当時の事件担当記者)
XはA君に性的な被害を加えた上、殺害したという残虐な側面を持つ一方で、気の毒な被害者でもあったのだ。
発生当時、その事件は”子供が子供を殺した”としか報じられなかった。遺族に近い関係者は、「このままでは、殺されたあの子が不憫だ」と取材に来た記者やマスコミ関係者に繰り返し性犯罪被害を訴えた。しかし、その声は無視され続けたと、今も憤りを隠さない。警察は別件だととりあわず、大半のマスコミ関係者も表向きの同情心は示すものの、本当の被害からは目を背け、加害者の過去については口をつぐんだ。
前出の関係者は、事件後十年以上経過した今でも、警察当局やマスコミに対する不信感を爆発させる。