国内

子供への性犯罪被害 語られざる「負の連鎖」

子供を「負の連鎖」に巻き込まないために

 児童虐待が社会問題として世間の大きな関心を集め、虐待の現場を知るケースワーカーなどから「虐待する親も、その親から虐待を受けていたケースが目立つ」と言われるようになった。もうひとつ、大きな声では語られないが、連鎖があると指摘されるものがある。ライターの森鷹久氏が、子供への性犯罪によって生まれる「負の連鎖」についてリポートする。

 * * *
 20歳から66歳までの男児ポルノ愛好者6人が、神奈川や広島、埼玉など7県警によって逮捕、追送検された。当局によれば、被疑者6人の中には家庭教師のアルバイト経験者や現役教師なども含まれており、160人以上の被害者が存在し、10万点を超す男児の裸などの写真や動画が押収されたという。似たような事件は昨年9月にも関西地方で起こっており、計5人の男が逮捕され、こちらも100人以上の男児が被害に遭っている。

 教職者などが手を染めた悪質この上ない犯行は、発生直後こそテレビ新聞が凄まじい勢いで報じるものの、犯人のおぞましさばかりがクローズアップされ、被害児童達を本当に救うためには何が必要なのか、視聴者や読者に訴えるような取り上げられ方はなされない。その現状に、過去の事件から何も学べなかったのかと暗い気持ちになった。

 今から十年以上前に起きた、ある痛ましい男児殺害事件には、子供の性犯罪被害への救済が不十分だったことが遠因ではないか、と思わせる事情があった。加害少年は過去、性犯罪の被害者でもあったのだ。もし、彼が過去に遭った性犯罪との向き合い方を覚えて成長できていたら、殺人に至るようなゆがんだ衝動を内面に抱えることはなかったかもしれない。

「被害男児であるA君は、加害男児Xに連れ去られ性的ないたずらを受けました。動揺したA君が騒ぎ出すと、XはA君を殺めた。しかしその後、X自身もかつて性的ないたずらを受けた経験を持つ被害者だということが周辺取材で判明したのです。もちろん当局がそれを認めた所で、事件と結びつけて書くことはできません。警察によって”別件”だと見做されれば、事件の遠因として書くことは許されない」(当時の事件担当記者)

 XはA君に性的な被害を加えた上、殺害したという残虐な側面を持つ一方で、気の毒な被害者でもあったのだ。

 発生当時、その事件は”子供が子供を殺した”としか報じられなかった。遺族に近い関係者は、「このままでは、殺されたあの子が不憫だ」と取材に来た記者やマスコミ関係者に繰り返し性犯罪被害を訴えた。しかし、その声は無視され続けたと、今も憤りを隠さない。警察は別件だととりあわず、大半のマスコミ関係者も表向きの同情心は示すものの、本当の被害からは目を背け、加害者の過去については口をつぐんだ。

 前出の関係者は、事件後十年以上経過した今でも、警察当局やマスコミに対する不信感を爆発させる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ブラジルを公式訪問している佳子さま(写真/アフロ)
佳子さま、外交関係樹立130周年のブラジルを公式訪問 子供たちと笑顔でハイタッチ、花柄のドレス姿も 
女性セブン
「寂しい見た目」の給食に批判が殺到(X /時事通信フォト)
《中国でもヤバい給食に批判殺到》ラー油かけご飯、唐揚げ1つ、「ご飯にたまご焼きだけ」と炎上した天津丼…日本・中国で相次ぐ貧相給食の背景にある“事情の違い”
NEWSポストセブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
家出した中学生を自宅に住まわせ売春させたとして逮捕された三ノ輪勝容疑者(左はInstagramより)
《顔面タトゥーの男が中学生売春》「地元の警察でも有名だと…」自称暴力団・三ノ輪勝容疑者(33)の“意外な素顔”と近隣住民が耳にしていた「若い女性の声」
NEWSポストセブン
山本賢太アナウンサーのプロフィール。「人生は超回復」がモットー(フジテレビ公式HPより)
《後悔と恥ずかしさ》フジ山本賢太アナが過去のオンラインカジノ利用で謝罪 「うちにも”オンカジ”が…」戦々恐々とする人たち
NEWSポストセブン
親日路線を貫いた尹政権を「日本に擦り寄る屈辱外交」と断じていた李在明氏(時事通信フォト)
韓国・李在明新大統領は親中派「習近平氏の接近は時間の問題」、高まる“日本有事”リスク 日米韓による中国包囲網から韓国が抜ける最悪のケースも
週刊ポスト
田中真一さんと真美子さん(左/リコーブラックラムズ東京の公式サイトより、右/レッドウェーブ公式サイトより)
《真美子さんとの約束》大谷翔平の義兄がラグビーチームを退団していた! 過去に大怪我も現役続行にこだわる「妹との共通点」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《「来来亭」の“ウジムシ混入ラーメン”動画が物議》本部が「他の客のラーメンへの混入」に公式回答「(動画の)お客様以外からのお問い合わせはございません」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン