牛丼・天丼、カレー、うどん・ラーメン、パフェ、珈琲……、いまや回転寿司チェーンはメインの寿司ネタもさることながら、専門店顔負けのサイドメニューで幅広い客層を掴み、“外食業界のアミューズメントパーク”と呼ばれるまでに進化した。
市場調査会社の富士経済によれば、回転寿司の市場規模は2015年で5777億円、今年は6117億円を予測し、すでにハンバーガー業界を凌ぐ勢いだ。
そんな回転寿司業界から大きなニュースが飛び込んできた。最大手「スシロー(運営会社/あきんどスシロー)」の持ち株会社であるスシローグローバルホールディングスが3月30日に株式を再上場する予定だという。
スシローはもともと2008年まで東証2部に上場していたが、業界再編を狙って触手を伸ばす外食企業や投資ファンドの激しい買収攻勢に幾度もさらされてきた。
「2007年に牛丼チェーンの『すき家』を運営するゼンショーが、創業家から株式を取得して筆頭株主になったものの、創業家を巻き込む内紛が勃発して対立。翌年には日系投資ファンドのユニゾン・キャピタルが資本提携を行い、TOB(株式公開買い付け)でゼンショーを追い落とし非上場に。その後、ユニゾンは2012年、英投資ファンドのベルミラに保有するスシロー株を売却した」(経済誌記者)
現在も持ち株会社の9割以上の株式を保有するベルミラだが、「スシローの売上高や利益が堅調に伸びているため、再上場で投資資金を回収して高値で売り抜ける出口戦略に入った」(前出・記者)というわけだ。
経営的には“食い物”にされた感のあるスシロー。しかし、店の中身は評価する声も多い。外食ジャーナリストの中村芳平氏がいう。
「近年、回転寿司チェーンはスシローのほか、『無添くら寿司』『はま寿司』『かっぱ寿司』の4強が業界を牽引してきましたが、主力ネタの〈まぐろ〉ひとつとっても、スシローが最も商品力が高い。
また、フライドポテトにこだわって“ポテロー”の呼び名が広まったり、行列店に負けないラーメンづくりを繰り返したりと、多メニュー戦略の先駆けとして固定ファンをがっちり掴んできました」
消費者からの根強い支持は売り上げにも結びついている。2016年9月期の売上高は1464億円で、最終損益も23億円の黒字に。また、店舗数も442店と着実に増やし、まさに業界を牽引するチェーンに成長したことは確かだろう。
しかし、この勢いを上場後も続けられるかは不透明だ。前出の中村氏はこんな懸念材料を挙げる。