安倍政権の内部では、2月の日米首脳会談をきっかけに静かな「権力の交代」が起きた──。「影の総理」と呼ばれた菅義偉・官房長官にかわって政権内で存在感を増しているのが“犬猿の間柄”の麻生太郎・副総理だ。
本来、政府の省庁間の政策調整は官房長官の所掌で、それが官房長官の権力基盤につながっている。
だが、首脳会談で麻生副総理とペンス副大統領をトップに自動車、農業、金融など広い分野で日米交渉の枠組みをつくることが決まり、それまで菅氏の後塵を拝する“名ばかり副総理”だった麻生氏が名実ともに菅氏の上に立って各省の利害調整の実権を握ることになった。
菅氏に代わって存在感を増しているのは、麻生氏ばかりではなく、二階俊博・自民党幹事長もそうだ。菅氏と二階氏は国会日程から沖縄米軍基地の辺野古移設問題まで衝突している。
「安倍総理は沖縄県との交渉を菅氏に一任してきたが、成果が上がらないことが非常に不満。そこで二階幹事長に党本部主導で交渉させている。
2人の手法は対照的で、菅さんが埋め立て工事を粛々と強行する北風政策なら、翁長雄志・沖縄県知事と親交がある二階さんは沖縄担当の副幹事長を4人任命して地元の要望を聞き、予算を増額するなど対話重視の太陽政策。
二階派の鶴保庸介・沖縄担当相も官房長官より親分の二階さんに顔を向けており、主導権はいまや二階さんが握っている」(自民党幹部)
これも事実上の菅氏の棚上げといっていい。自民党内では、安倍首相が不祥事続きの現内閣の人心一新のために3月の予算成立後に内閣改造に踏み切るという見方が急浮上した。この改造人事が安倍―菅関係を決定的な事態に追い込む可能性がある。