近年、大手コンビニやスーパー、量販店の酒コーナーでビール類よりも多くの棚が割かれているのが「缶チューハイ」のジャンルだ。レモン、グレープフルーツといった定番から、パイナップル、イチゴ、さくらんぼなど“変わり種”まで、さまざまな果物を原料にした商品がズラリと並ぶ。
缶チューハイ人気は数字を見ても明らかだ。2016年の市場規模は前年比6%拡大し、1億6200万ケース(1ケースは250ml×24本換算)に達する見込みで、今年も1億7000万ケースを突破すると予測されている。
その一方で、発泡酒や第三のビールを含めたビール系飲料は右肩下がり。2016年の出荷量は前年比2.4%減の4億1476万ケース(1ケースは大瓶633ml×20本換算)。12年連続で過去最低を記録するほど落ち込んでいる。
これまで缶チューハイ市場が伸びている背景として真っ先に挙げられていたのが「若者のビール離れ」だが、なにもビールを飲まない若者だけがチューハイを愛飲しているわけではない。
キリンビール・マーケティング部主幹の田中耕平氏がいう。
「自宅で缶チューハイを飲む頻度を年代別に調べたところ、20代だけでなく30~60代まで各年代で上昇していることが分かりました。しかも、1杯目に飲むお酒もビール類の57%に次いでチューハイが31%を占め、晩酌・夕食時、風呂上がりなどさまざまな飲用シーンで定着しつつあります」
「とりあえずビール」……ではなく缶チューハイの浸透とともに、キリン主力ブランドの『氷結』も好調をキープ。2011年から6年連続プラスとなる3510万ケースの販売を誇る。3月21日には「もっと若者や将来の主飲者を増やしたい」(前出・田中氏)との狙いから、アルコール度数4%と軽めな『旅する氷結』3種類を発売する。
その他、『本搾り』や『ビターズ』など素材の良さやこだわり製法を売りにした缶チューハイも固定ファンを掴み、支持層は着実に広がっている。
そんなキリンに負けるわけにはいかないと缶チューハイ分野を重点的に強化しているのが、サントリースピリッツだ。