2月23日、「首狩り王」や「コストカッター」などの異名を持つカリスマ経営者のカルロス・ゴーン氏が、約17年間の長期にわたり君臨し続けてきた日産自動車の社長と最高経営責任者(CEO)を退くと発表したことで、日本をはじめ世界20か国以上で働く約15万人を超える従業員たちに動揺が広がった。
その前日には、「毎月最終金曜日午後3時退社」のプレミアムフライデーの導入を発表したばかり。ある若手社員は、
「この週末は親しい同僚と久しぶりに温泉付きのスキー旅行を楽しもうと思った矢先だったが、突然の社長交代で4月以降の新体制を思うとのんびりもしていられない」と不安げな顔を浮かべていた。
もっとも、「そろそろ動きがあるのでは……」と予想していた古参の幹部社員もいたようだ。自動車業界に詳しいジャーナリストは、「発表後に、今さら『たられば』の話をしてもしょうがないが」と前置きしながらも、
「昨年10月、ゴーンさんが三菱自動車の会長に就任し、同時に西川さんを共同CEOに昇格させると発表した時点から“花道”を飾るような動きがいくつか目についた」と振り返る。
そのなかでも一番わかりやすかったのが、日経新聞が1月に連載したゴーン社長の「私の履歴書」。
「通常、そこに登場する人物は功成り名を遂げて第一線から身を引いた経営者らが自らの功績をたたえて自画自賛する話が中心。在任17年も務めているとはいえ、ゴーンさんのような現役バリバリ、しかも還暦を少し過ぎた“若手”の経営者が登場するのは異例であり、内容的にも、まるで日産社長としての『卒業論文』のようにも思えて、違和感があった」(経済誌記者)
と指摘する。さらに、花道には欠かせない好調ぶりをアピールするようなおぜん立てもみられた。