現在、安保教授が取り組んでいるのが、仕事を持っている脳性マヒ患者に対する治療だ。マヒにより、両足が突っ張って歩き方がギクシャクし、腰痛に悩む痙直型脳性マヒ患者に、磁気刺激とリハビリテーションを2週間実施した。その結果、歩くたびに内股がすれていた患者が、足の裏をべったりと地面につけられるようになり、歩き方が非常にスムーズになった。
「リハビリは、成果が出にくいと思われていますが、磁気刺激と適切なリハビリテーションを併用すれば、確実に効果があがる治療です。近年、若い脳卒中患者が増えているので、マヒを軽減し、いかに社会復帰を促進するかがテーマとなっています。現在、当病院と人材派遣会社が提携して、マヒや失語症の治療を行なった方の社会復帰を支援する取り組みを実施しています。すでに5人の方が社会復帰を果たしました」(安保教授)
磁気刺激打ち分け治療は、16歳以上で頭蓋内にクリップやコイルなどの金属やペースメーカーが入っていないこと、うつ病でないこと、認知症を併発していないことなど、いくつかの適用除外がある。
上肢マヒへの治療は現在、北海道、青森、東京、長野、福井、兵庫、広島、鳥取、鹿児島で実施。受診を希望する場合は、主治医からの予約により受付可能だ。
●取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2017年3月10日号