明治安田生命が2月に発表した、毎年恒例『理想の上司』ランキング。自身も9位にランクインしている女優の真矢ミキさんが、『理想の上司』を語ります。
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少し早い春。理想の上司ランキングなるものが今年も発表され、私も恐縮ですが、辛うじて今年も入れて頂きました。
夢と希望にあふれた若い方からそう思っていただけるのはありがたいなと思う今日この頃ですが、しかし、おそらく(上司の)役柄のイメージが強いのではと思う事もしばしば。この役というのは私が演じたとはいえ、脚本や監督、そしてカメラといったスタッフのお一人お一人が私のかっこいい角度をプロの目線で探しに探し、プロの技を駆使した挙句、バリッ! と今日も映画館のスクリーンやテレビ画面に凛と存在しているのだ。
実物の私といえば、オフィス経験はなく、また警察署で働いた事もなく、当然犯人を逮捕した事もない。そう、私がよく頂くキレッキレの上司役とは縁のない生活を送ってきたのだ。イメージというのは本当に、ある時から本人を越えて一人歩き、いや、時に一人爆走しだすので、いまだ本来の自分との距離に戸惑うことがある。
『踊る大捜査線』が上映されている頃なんか(ヒール役で出演)、デパートでリュックを買おうと店員さんに「これは何色展開ですか?」と聞いただけで、女性の店員さんが今にも泣き出しそうになったことも。“何色でも、あります! あるか全国探します! 何なら私が作ります! 縫います!”みたいな…人間が究極に緊張した時の強張りが、顔や全身から漏れ伝わった。本当に申し訳ない。
交番の前を通れば、警官の方が敬礼しそうになったり、飛行機の機内でウトウトしていると、おやすみ中すみませんとばかりに顔を近づけてきては「憧れてキャビンアテンダントになりました」なんて感謝されたり。私もつい「今日は不具合はなかった?」なんて、つい口をつきそうになるから怖い。早い話、ドラマの見過ぎならぬドラマのやり過ぎなのだ。
もっと言うなら、私は理想の上司ではなく、空想の上司なのだ。ただ、宝塚という世界も阪急電鉄が母体となる大きな組織の中にあるので、私は一社員であり、劇団内では“上級生”という“上司”ではあった。
そして18年の在籍で、最も難しいと感じたのは、やはり下級生の育成であり、その伝え方だった。人それぞれ性格が違うから、同じように言っても捉え方は同じじゃない。