世界では毎年、生産量のおよそ3分の1に当たる13億トンもの食品が捨てられている。中でも日本は、世界の食糧援助量320万トンの倍相当の632万トンの食品を廃棄処分している。
その日本の食品ロス、632万トンのうち、飲食店やスーパーからの廃棄は330万トン。約半数の302万トンは、家庭から出る食材だ。『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)の著者で、食品ロス問題に詳しい井出留美さんが言う。
「家庭からの廃棄の要因としては、買い込みすぎ、調理しすぎ、といったことはもちろん、野菜などの皮を厚くむき過ぎたり、食べられる部分まで捨ててしまう“過剰除去”や、賞味期限が迫ってきたために捨ててしまう“直接廃棄”などが考えられます。京都市が試算したところ、1世帯4人として、食品廃棄額は年間6万円分。処理費用5000円を加えて、6万5000円。この数字を全国換算すると、日本は年間総額11.1兆円を食品ロスで失っていることになるのです」
6万5000円が現金だとしたら、ポイと捨ててしまう人は世の中にいまい。なのに、それが食品で、食べ残しだとか、傷みかけているとなると抵抗感が薄らぎ、廃棄してしまう──。
飽食に慣れてしまった気持ちを悔い改め、必要以上に食を摂ることを恥じ、むしろ、空腹であることに美学をみるくらいの心を持つことが、今後の私たちには求められるのかもしれない。
そのためには、食品に対する正確な知識を持つことが肝要だ。賞味期限と消費期限の違いも理解しておきたい。
「消費期限はその日までに消費したほうがよいもので、日持ちが5日以内のもの。対して賞味期限は、おいしさの目安。品質が落ちる日付ではありません。しかも、その日付は実際の日持ちよりも2割近く短くなっている場合が多い」(井出さん)
全国さまざまな気温や湿度の中、商品は買われていく。メーカーとしては“最大公約数の条件”を想定して賞味期限を設定する。
「賞味期限は、短めに設定された“おいしさの目安”程度に考えるのがいいでしょう」
そう語る井出さんが提唱する、“家庭でできること”“食品をムダにしないために知っておきたいこと”を下に4つ挙げた(「」内はすべて井出さん)。私たちが少しずつでも意識を変え、行動を起こすことで、状況はやがて確実に変わっていくことだろう。