「悔しいというより自分に落胆している。またやってしまったかと情けない。大事な大会にピークを合わせる力が一番足りない」
2月24日に行なわれたノルディック世界選手権で、3位に終わったスキージャンプ女子の高梨沙羅(20)は目を赤くしてこう語った。
今シーズンはW杯で男女を通じて最多タイに並ぶ53勝目をあげ、4度目の総合優勝も獲得した。
それだけ圧倒的な力を見せつけながら、ソチ五輪(2014年)、前回の世界選手権(2015年)に続いて、またしても大一番で結果を残すことができなかった。
ネット上でも、〈ホントに勝負弱いと思う。前回のオリンピックでもダメだったが、今回も心配〉〈化粧より勝負強さを磨いてほしい〉と、1年後に迫った平昌五輪に向けて悲観的なファンの声が相次いだ。長野五輪団体金メダリストの原田雅彦氏は、高梨の敗因をこう分析する。
「世界トップの実力があるのは間違いありません。明日、五輪があって、『誰が優勝しますか?』と聞かれれば、『高梨』と即答します。彼女の武器は他の女子選手にはない助走スピードと技術の高さで、飛距離では誰にも負けません。女子に飛距離が重要となるラージヒルがあれば圧勝でしょう。しかし、女子のノーマルヒルでは高い技術があっても差が付きにくい。だから1本目で大きくリードできないと、焦って自分を見失ってしまい、力みにつながってしまうのでしょう」
高梨自身もそれを自覚しているのか、羽生結弦や北島康介ら五輪金メダリストのメンタル面を参考にしたいと話している。スポーツメンタルトレーニング指導士の菅生貴之氏(大阪体育大准教授)はいう。
「五輪だから世界選手権だからと、特別な舞台に向けて特別な準備をしている人のほうがかえって上手くいかないことが多い。何もしないといえば極端ですが、金メダリストの多くが『普段通り』というキーワードを挙げている。大舞台で“普段”と違うことを意識してしまっていることが結果に影響しているのかもしれない」