主人公は若手芸人コンビ「スパークス」のボケ担当の徳永太歩(林遣都)。相方の山下(好井まさお)と熱海の花火大会の営業で漫才をするが、観客は数人という有様だ。そこに現れた先輩コンビ「あほんだら」の神谷(浪岡一喜)は「敵とったる」と漫才を始めるが、さらに観客は激減してほぼゼロに。それでも神谷の媚びない芸に惚れ込んだ徳永は、神谷に弟子入りを頼む。しかし、皮肉にも先に人気が出たのはスパークスのほうだった…。
せまいアパートで暮らし、相方と公園で必死に練習いる徳永。所属した事務所ではお荷物扱いをされる。一方、誰にもマネできない天才的なセンスをむき出しにすればするほど、誰にも理解されなくなっていく神谷。若手芸人のリアルな日常と、それでも必死に何かを追いかける姿が切ない。
このドラマで何がすごいかといえば、スパークス、あほんだら、二組の漫才シーンである。林遣都もその大変さを語っているが、浪岡一喜は熱海のワンステージでなんと139回も「地獄!!」と言っている。(回数はペリー調べ)。しかし、本当にすごいのは、俳優ふたりの漫才を受け止める相方たちだ。「スパークス」のツッコミ担当山下(井下好井の好井)と「あほんだら」のツッコミ担当大林(とろサーモン村田秀亮)だ。漫才シーンを見ていると、膨大なセリフを機関銃のごとく正確に発する俳優に驚くが、漫才の雰囲気を出しているのは、結局、好井と村田なのである。
本職の漫才師にとって、練り上げた「爆笑漫才」ではなく、「ウケない漫才」を見せるのは、意外に難しいはず。ふとした瞬間、真剣にツッコんでいるのではと思わる場面がある。ひょっとしてお笑いのプロの条件反射でウケを狙ってしまうのか!?
華やかな花火を背景に出てきた番組タイトル。その美しさに感動するが、やっぱりこのタイトルを『花火』と間違える人がいるに違いないとしみじみ思う。それもこれも狙っての『火花』だとしたら…おそるべし又吉マジック。