東日本大震災、そして福島第一原発(1F)事故から6年近くが過ぎた今も、現地では約6000人の作業員が、数十年単位の計画で進められる廃炉作業に従事している。福島第一原発の廃炉作業はどの段階にあるのか。これからの課題とは。現場をレポートする。
朝6時半──。福島浜通りの中心都市・いわき市から約40km、1Fのある大熊町・双葉町に向かって北上する国道6号線は多くの車で渋滞する。1Fに向かう作業員たちの車列だ。
敷地内に入るとまず目に飛び込んでくるのは、白く巨大なカマボコ型の建物だ。高所作業など危険を伴う現場を再現した体験型安全教育施設で、新しく入所した作業員が安全に作業を行なうための訓練に使われている。
車を降りると、内部被ばくの測定機が設置された事務本館と、構内への入退域を管理する施設を経て、9階建ての大型休憩所(1200人収容)に入る。7階にある2つの窓からは真横一列に並ぶ1号機から4号機が見え、廃炉に向け多くの作業員が従事している様子も窺える。
意外に感じたのが、彼らが身につけている作業服だ。1Fの作業服といえば、放射性物質の汚染から身を守るための宇宙服のような白い防護服と、顔全体を覆う全面マスク姿を連想する人が多いはずだ。こうした重装備では動作や視野が著しく制限され、作業員同士のコミュニケーションも取りにくい。加えて、夏場は蒸し風呂のような灼熱地獄に苦しむとも伝えられた。
この6年の間に瓦礫を撤去し、敷地内の汚染した雑草や樹木を伐採。地表を剥ぎ取った後にモルタルを散布し、放射性物質の飛散と地下への雨水浸透を防ぐ工事(フェーシング)を行なったことにより、現場の作業環境が改善され、敷地面積の90%超では一般作業服と防塵マスクで作業ができるようになったという。