食堂で提供される食事には福島県産の食材が用いられ、昼時には毎日900人ほどが利用する。カレーを頬張っていた31歳の作業員は、「食堂ができる以前は、出勤前に買ってきたお弁当を仮設休憩所で食べていた。冷めきった昼食ではなく、温かくて毎日違うメニューを食べられるから本当にありがたいです」と語る。
約7時間の取材の中で印象に残ったのは、緊張感を漂わせつつも整然かつ淡々と進められる作業風景だ。それは混乱と不安に包まれた事故直後からの景色とは明らかに違い、「有事」から「平時」にステージが変わりつつあることが窺える。
約6000人にのぼる東電および協力会社の従業員たちの“兵站”が劇的に向上したことは確実な前進だろう。だが、廃炉作業は今後40年続く長期計画である。肝心の廃炉作業自体はこれからが始まりであり、しかも世界で前例のない難問への挑戦の連続でもある。
そうした難題に立ち向かうために不可欠な「人間とモノ」の作業環境が整った今、廃炉作業の進捗を冷静に見守り、チェックしていくことこそ日本人の重要な役割ではないだろうか。
※週刊ポスト2017年3月17日号