「飲食店内は原則禁煙」など受動喫煙対策の強化策を盛り込んだ厚生労働省の健康増進法改正案をめぐり、与野党を超えた国会議員から「厳しすぎる!」との反対意見が相次いでいる。
2月中旬に行われた自民党厚生労働部会。河野太郎議員が〈喫煙者はこれまで隣にたばこを吸わない人がいてもお構いなしで吸ってきた〉と話すなど、規制強化に前向きな声が出る一方で、〈飲食業界は命をかけて商売している。喫煙も含めてどういうサービスを行なうか選択肢を残すべきだ〉(岩屋毅議員)と、強硬姿勢の厚労案に懸念を抱く議員も。
今国会での法案提出予定日が迫る3月に入ってからも、異論は収まらない。3月7日には自民党のたばこ議員連盟が臨時総会を開き、〈禁止を前提にして進めるやり方は原理主義的だ〉(同議連会長の野田毅議員)と主張。「禁煙・分煙・喫煙」の店頭表示を義務付けることで喫煙者の権利も尊重する“対案”を示した。
また、同日には自ら愛煙家だと公言する竹下亘議員(国会対策委員長)もこの問題に触れ、こうこぼした。
〈全エリアで禁煙と言われたら俺はどうやって生きていけばいいのか、という思いを持っている。(厚労案が)国会に出てきて法律ができれば従わなければならないと覚悟しているが、できれば出てきてほしくないというのが私個人の本音〉
賛否が分かれているのは、与党議員ばかりではない。民進党内でも松原仁議員を代表に「分煙推進議員連盟」が設立された。飲食店は一定の分煙技術をクリアすれば、空間分煙や時間分煙といった喫煙も認めようという方針だ。
こうした永田町の反発も考慮し、厚労省は昨年10月に公表した“たたき台”法案の一部変更を検討。飲食店でも一部規制の対象から外す「例外」を設ける予定だが、この条件に多くの店が振り回されている現状もある。
厚労省の考えはこうだ。たたき台では、レストランやラーメン屋、居酒屋、おでん屋など店の業態や面積を問わず、店内に隔離された喫煙室を設けない限り、原則禁煙を義務付ける方向だった。
それが、今年3月1日に公表した変更点では、主に酒類を提供するバーやスナック、しかも小規模(30平方メートル以下の条件が候補になっている)店舗に限り、喫煙禁止場所としない旨が示された。
「店主が一人で営んでいるような店は喫煙室設置の費用負担が難しく、経営を圧迫する恐れがある。また、お酒がメインの小規模バーやスナックは、未成年や家族連れなどが訪れる可能性が低く、受動喫煙の影響を受けにくい」(厚労省関係者)
との理由からだ。当初は小規模な居酒屋や焼き鳥屋などにも同じく例外とする案もあったというが、今回の変更点では挙げられていない。つまり、規制対象というわけだ。
ここで、大きな疑問点が生じる。居酒屋の中にも酒を多く取り揃えて人気の店もあるし、バーの中にも食事メニューを充実させた「ダイニングバー」や「バル」といった業態もある。さらには、大規模なバーになれば未成年の利用も想定されるのか、その線引きは非常に曖昧だ。
全国約8万店の飲食店を束ね、そのうち小規模な居酒屋やバー、スナックが6割を占めるという全国飲食業生活衛生同業組合連合会(全飲連)の専務理事、小城哲郎氏も戸惑いを隠さない。