結婚と同時に、夫の両親と同居することになった。山本さんの方から「一緒に住んでください。お願いします」と頭を下げたという。
「仕事と家事を完璧に両立するなんてできませんから。幸いなことに姑は『BG』(ビジネスガール)といわれた時代に丸の内で働いていた進歩的な人。仕事にも理解があったし、何よりウマが合ったんですよね」
◆冷凍食品に家族は…?
食卓には当然のように冷食がたびたび並んだが、それを家族が責めることはなかった。それどころか…
「姑は、ほとんど冷食を口にしたことがなかったので、ものすごく衝撃を受けていました。特に当時最先端だったコロッケを持ち帰って来た時は“こんなにおいしいの!? 油で揚げなくていいの!?”と大感動でした。夫は、“おいしけりゃいい”主義だから、ずいぶん楽をさせてもらいました(笑い)」
自宅の冷蔵庫の冷凍室には常に40種類以上の冷凍食品がびっしりと詰まっている。入らなくなった時のためにと、洗面所にはもう1台の冷凍庫も置かれている。27才になる一人娘はそんな家庭で育ってきた。「いちばん好きな母の料理は?」と聞くと、「味の素の冷凍食品のギョーザ」と即答する。
「冷凍食品で育て上げた娘ですが、健康ですよ。中学から大学院まで、ほぼ皆勤賞。よく冷食は『体に悪い』とか言われますが、そんなことないですよ。保存料が不要、オーガニックのものだってありますから」
そう胸を張る山本さんは、幼稚園のお弁当で「冷食禁止」などの風潮に疑問を抱いている。
「冷食は『手抜き』ではなく『手間抜き』です。冷食は、調理の手間を省いてくれるもの。冷食を使って、その分空いた時間で、じゃあもう一品は手作りで卵焼きを作ろうとか、子供の話を聞く時間にしようとか、そういうふうに考えればいいんじゃないかな、と思うんです」
今では娘の方が、山本さんより冷食のアレンジも上手だという。冷食のとんかつを使ってかつ丼にしたり、冷食チャーハンの上に中華丼をかけてあんかけチャーハンを作ったり…。そんなふうにあれこれアイディアを出し合って新メニューを食べながら、他愛もない会話をする食卓はなんともあったかくてほっこりするもの。
そんな山本さんには夢がある。『冷凍食品ミュージアム』を作ることだ。
「冷凍食品ミュージアムに行けば、全国の冷凍食品がいつでも手に入り、食べられる。お好みでしたら、『超低温冷蔵庫』の中に入っていただいて、凍ったバナナで釘を打っていただくとか…楽しそうでしょ?(笑い)」
※女性セブン2017年3月23日号