3月19日に“春のセンバツ”こと、第89回選抜高校野球大会が開幕する。怪物スラッガー・清宮幸太郎(早稲田実業・東京)に報道は集中しているが、他にも見どころは数多くある。
優勝候補の一角、大阪桐蔭の注目選手を巡る知られざる因縁について、新著『永遠のPL学園 六〇年目のゲームセット』を上梓する柳川悠二氏(ノンフィクションライター)がレポートする。
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大阪桐蔭は今や、1980年代のPL学園のように、全国から甲子園、そしてプロを夢見る球児が集まる名門校だが、今年のチームは4月に2年生となる世代に注目が集まる。
筆頭格は、中学時代に146キロを投げ、スキーのスラロームで日本一になった経験もある右腕・根尾昂(あきら)だ。大阪桐蔭では、ショートや外野を守る強打者としても活躍する。さらに190センチ左腕の横川凱(かい)。「彼がエース格となればチーム状況は良い状態」と西谷浩一監督が話す。
これほどの長身で、角度をつけた直球と鋭いスライダーを投げる投手は、高校野球の歴史を紐解いてもなかなか見当たらない。昨年の秋季大阪大会では先発登板の直前に左手の指のまめをつぶして回避するなど公式戦の登板実績が乏しく、冬の間にはケガもあった。全国的には無名だが、選抜に向けた大阪桐蔭のいわば“隠し球”だ。
だが、筆者が個人的にその身体能力に注目するのがセンターを守る藤原恭大(きょうた)である。
中学時代に所属した硬式野球の枚方ボーイズでは投手も務め、球速が140キロを超えていたという強肩の持ち主。大阪桐蔭入学後は外野手に専念している。