3月19日に開幕するセンバツ甲子園。怪物スラッガー・清宮幸太郎(早稲田実業)と並んで注目されるのが激戦区大阪から出場する大阪桐蔭と履正社だ。新刊『永遠(とわ)のPL学園 六〇年目のゲームセット』を上梓した柳川悠二氏(ノンフィクションライター)が両校の強さの秘密に迫る。
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陽が沈み、ライトに照らされた大阪桐蔭グラウンドの一塁側ブルペンで、ふたりの1年生投手が白球を投げ込んでいた。
「今のカーブ、うまく腕が抜けてて、良い感じでした。次、ストレートいきます!」
爽快な声の主は根尾昂(あきら)。岐阜県の飛騨高山出身の彼は、中学時代に146キロを記録し、入学前から注目を集めていた“怪物右腕”だ。中田翔(日本ハム)、森友哉(西武)など“やんちゃ”な印象のOBが多い中で、両親とも医師という根尾は中学時代の成績がオール5で、生徒会長を務めた秀才だ。
隣で投げていたのは190センチ左腕の横川凱(かい)。全国的には無名の存在だが、直球はやはり140キロを超える。
彼らは100回目となる来夏の選手権大会を3年生として迎える。記念大会制覇を見据え、監督の西谷浩一(47)が例年になく“補強”に力を入れた世代と噂された。西谷は苦笑いする。
「記念大会に向けたチーム作りでは絶対にありません。今年の選抜も、夏も勝ちたいし、来年の100回大会、再来年の101回大会も同じように勝ちたい」
大阪桐蔭野球部は、これまで春1回、夏4回の甲子園制覇を誇る。だが、直近の2年で大阪桐蔭を凌ぐ戦績を残している学校が同じ大阪にある。
2年連続トリプルスリーを達成した山田哲人(ヤクルト)や、今年ドラフト1位でヤクルトに入団した寺島成輝を輩出した履正社だ。
寺島がいた昨年のチームは、夏の甲子園でベスト16、国体では初優勝を果たした。新チームとなった昨秋、神宮大会では清宮幸太郎のいる早稲田実業に打ち勝ち、日本一に輝いた。1987年から指揮をとる監督の岡田龍生(55)は謙遜しながらこの2年の快進撃を振り返った。
「力のあった寺島の代のチームが、2015年秋の大阪大会3位決定戦に負けて、2016年選抜に出られなかった。その悔しい1敗が去年と今年のチームを成長させてくれました」
選抜でも覇を競う両指揮官は、経歴や指導、選手勧誘の方針からして対照的だ。