侍ジャパンの小久保裕紀監督の株が急上昇だ。大人力コラムニストの石原壮一郎氏はそこに「お花見幹事」の仕事力を学ぶ。
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予想以上の盛り上がりだし、予想以上の快進撃です。第4回ワールド・ベースボール・クラッシックで、侍ジャパンは1次、2次ラウンドを負けなしの6連勝で通過。米国時間21日(日本時間22日午前10時)に、アメリカ・ロスアンゼルスで準決勝に挑みます。
壮行試合で負け越してしまったこともあり、大会前の小久保監督の評価はさんざんでした。しかし、今は絶賛の嵐が巻き起こっています。手の平を返すとはまさにこのこと。まあ、いわゆる「野球通」のみなさんは批判や文句が大好物なので、侍ジャパンの優勝を願いつつも、もし負けたらあれこれ言ってやろうと手ぐすね引いていることでしょう。
WBCの決勝ラウンドも楽しみですが、そろそろシーズンを迎えるお花見も楽しみです。侍ジャパンの監督もお花見の幹事も、メンバーの気持ちをひとつにまとめて、グイグイ引っ張っていくのが役割という点では同じ。今をときめく小久保監督の采配や生き方から、お花見の幹事の心得を学んでみましょう。
野球の試合もお花見も、筋書きのないドラマです。どの回はどの投手で、どこで誰を代打に出してなんて計画したところで、ぜんぜん思い通りにはいきません。小久保監督の采配は、選手の起用方法に一貫性がない、思い付きでやっているように見えるという声もあります。しかし、今までの試合ではそれがいい結果を生みました。
お花見も、ビールやおつまみが途中で足りなくなったり、人数が集まり過ぎてスペースが手狭になったりなど、不測の事態の連続です。「ビールはあるだけで我慢してほかの酒を飲め」「人数に合わせて場所取りしてるんだから、急に来るな」などと、あらかじめ決めたとおりに進めようとしたら、たちまちギクシャクした雰囲気になるでしょう。
キューバ戦で打撃好調の小林を引っ込めて内川を代打に送ったように、イスラエル戦で千賀をいきなり先発で起用したように、お花見という戦いで見事な勝利を収めるために必要なのは、臨機応変の対処です。話の輪にいまいち入り込めずにいる年長者を呼んで、「ここは君しかいない」とおだてつつ、ビールを買いに走ってもらいましょう。本人もきっと「ここは勝負どころだな」と意気に感じて、いい働きをしてくれるはずです。
また小久保監督は、2月に行なわれた宮崎での強化合宿で「全員が納得することはあり得ない。そういう中で最後の勝利だけが、みんなを救える」と語ったとか。お花見もしかり。誰もが話したい相手とじっくり話せて、ほどよく酔っ払い、桜もじっくり満喫できるなんてことはあり得ません。よく知らない相手と無理に話を合わせたり、飲み過ぎたヤツにからまれたり、肝心の桜が見づらい位置に座る羽目になったりという事態が付きものです。