店の大小を問わず、街中のあちこちに点在するドラッグストア。いまやその規模は不振続きの百貨店を凌ぎ、6兆円を超えてなお成長し続けている。コンビニの市場規模が10兆円超であることを考えると、ドラッグストアも完全に消費者の生活圏に根付いている業態といえるだろう。
ドラッグストアが好調な理由は2つある。1つは、本来、看板商品であるべきクスリ(市販薬)よりも食品の売り上げで稼いでいることだ。
「もともと医薬品や化粧品の粗利率は高く、30%以上ある商品も多い」(流通業界関係者)安定した業態ではあるが、近年品揃えを増やしているのは、野菜や肉、鮮魚、惣菜など、まるでスーパーマーケットと見紛う食料品の数々。
なぜこのような方針を取るのか。流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏が解説する。
「意識しているのは、やはりコンビニです。高齢シニア層の増加によって、日常の消費行動はコンビニが支持されているように、ますます“近くて便利”な店へと流れる方向にあります。そこで、ドラッグストアもコンビニに負けない生活雑貨や食品をまんべんなく揃えて、小商圏に対応した『便利屋』へと舵を切っているのです」
食品売上高がもっとも高いのは、九州を拠点に関西や中部地方まで出店を伸ばしている「コスモス薬品」だ。地元では“コスモス食品”と揶揄されるほどで、2016年の食品売上高は全国チェーンのスーパー並みの約2471億円、構成比は全売上高のじつに55.2%を占める。
2番目に食品売り上げが大きいのは、栃木県が本拠地の「カワチ薬品」で、約1200億円(構成比は46.2%)。すべての生活アイテムが揃うドラッグストアとして人気を誇る。
こうして首都圏よりも地方のドラッグストアチェーンで食品売り上げを伸ばしているのは、「小商圏であっても近場にライバルの少ない地方ほど、地域生活者のライフラインとなるような日用品の品揃えが求められている」(前出・流通関係者)ためだろう。
しかし、今後ドラッグストアチェーンの勢力争いに大きく左右しそうなのは、食料品の拡充ではなく、医師の処方箋に基づき薬剤師が薬を調合する「調剤事業」の広がりだ。いま、調剤薬局を併設したドラッグストアが増えているが、それに伴い、顧客層にも変化が表れてきた。
「これまで医師の処方薬をもらうときは、受診した病院のそばにある調剤専門薬局でしたが、家の近所にできたドラッグストアで一括して処方してもらえば、待っている間に日用品の買い物もできるし、処方薬で店のポイントも貯まるのでおトク」(60代女性)
病院の目の前にある、いわゆる「門前薬局」の収益が付近のドラッグストアに分散されているのだ。「いずれ、調剤医療費の半分ぐらいのシェアをドラッグストアが握る」(大手ドラッグストア幹部)との予測さえある。
では、調剤事業で勢いに乗るドラッグストアはどこか。