佐川急便は2016年12月22日、「弊社従業員の略式起訴処分について」というプレスリリースで、「11月22日に警視庁に逮捕されました従業員が、交通違反に係る犯人隠避教唆の容疑で略式起訴されたことは誠に遺憾であり、関係者の方々にご迷惑とご心配をおかけしましたこと、お詫び申し上げます」と発表するにとどまっている。
城東営業所、城北営業所、板橋営業所、練馬営業所などでドライバーの離職が相次いだ。その結果が、2016年の年末の“パンク”となる。佐川の40代現役ドライバーである鈴木徹氏(仮名)は、こう証言する。
「通常なら、年末の最後の10日間が、最も忙しくて、それをチームで力を合わせて乗り越えるんですが、昨年は、その最後の10日の忙しさが、10月、11月、12月と3か月続いた感じですね。要は人手が足りないのです。200人前後のドライバーを抱えるうちの営業所では、年末の繁忙期を前に5人が辞めたんですけれど、営業所が人員を補充しないため、人手不足となりました。その分、負担が大きくなる、10月から12月については、10万円程、特別手当でももらわないと、割に合わない気持ちになりましたね」
佐川急便は、昨年末、東京や埼玉、愛知、大阪を中心に配送に遅れが出るという、いわゆる“パンク”を起こした。同社は12月22日、ホームページに、「年末の荷物量の増加による集配遅延について」という告知を出した。「年末の荷物量の増加に伴い、全国的に集荷・配達の遅延が見込まれます」、「時間により管轄営業所へのお電話もつながりにくい状況となっております」──という内容。この数年、年末や年度末では見慣れた光景となった。
ヤマト運輸、佐川急便というトップ2社の現場は、明らかに疲弊しており、その度合いは増す一方である。この流れを変えるには、大手荷主の大口割引の幅を極力減らし、運賃単価を上げていけるのかどうかにかかっている。運賃が上がれば、自社のセールスドライバーや、下請けの長距離トラック企業、仕分けセンターへのアルバイトへの待遇を改善する原資を手にすることもできる。
そのためには、利用者である消費者にも応分の負担が求められる場面も出てくるだろう。ネット通販への大口割引がなくなれば、送料無料が有料に切り替わるかもしれない。再配達に料金を受け取るという案も出ている。それを、宅配便というインフラを守るための必要な出費ととらえることができるのかどうか。その点に、宅配業界の今後の行方は大きく左右される。
※週刊ポスト2017年3月24・31日号