ビジネス

「桜」と「富士」 列車愛称でかつて人気二分も現在は明暗

かつて寝台特急「富士」に取り付けられていたトレインマーク

 桜が咲く景色と富士山は、訪日外国人にもっとも人気が高い観光スポットのひとつだ。桜と富士は日本を代表する風物のひとつとして、企業名や船など様々なものの名称にも使用されてきた。もちろん、鉄道も例外ではない。ある路線を運行されるときに使われる「列車愛称」の世界でかつて人気を二分した桜と富士だが、今では桜に人気が集まっている。列車愛称と桜と富士の過去と現在について、ライターの小川裕夫氏がリポートする。

 * * *
 春の行楽シーズン。鉄道旅でも不動の人気を誇るのが、桜だ。繊細で可憐な美しさは日本人の心とも形容される。そうした桜への情念は、鉄道にも深く入り込んでいる。車窓から眺めるだけではなく、桜と列車、桜と駅舎といった風景は見る者の心を捉えて離さない。そして、古くから列車愛称にも「さくら」・「桜(櫻)」が使用されてきた。

 日本全国を走る列車には、多くの愛称がつけられている。東海道新幹線なら「のぞみ」、「ひかり」、「こだま」、北陸新幹線なら「かがやき」、「はくたか」、「つるぎ」といった具合だ。

 列車愛称は、新幹線だけの専売特許ではない。在来線や私鉄、路面電車などにも、愛称はある。JR北海道には「カムイ」、JR四国には「いしづち」、小田急ロマンスカーには「はこね」、「えのしま」、札幌市電では「ポラリス」、広島電鉄では「グリーンムーバーマックス」など、数え切れない。

 列車への愛称は、1929(昭和4)年から名付けが始められた。当時、関東大震災の影響で列車の利用者数は激減しており、鉄道省は需要を掘り起こすために特急列車に愛称の導入することを提案。鉄道を身近に感じさせることで需要の掘り起こしを狙ったといわれる。

 鉄道省が提案した特急列車の愛称は、即座に広く国民に公募された。公募には、1万9000票以上が寄せられ、得票1位は1007票の「富士」、2位は882票の「燕」、3位は834票の「櫻(さくら)」だった。そのうち、鉄道省は1位の富士と3位の櫻(さくら)を採用。こうして、特急「富士」と「櫻」が走り始めた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン