都民は徒にリスクばかりが喧伝される事態を望んでいるわけではないはずだ。豊洲市場移転問題について、都政に詳しいジャーナリスト・広野真嗣氏がレポートする。
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小池百合子・都知事の人気を盤石なものに押し上げてきた「豊洲劇場」が山場を迎えている。「移転延期」の判断以降、地下空洞問題などを浮き彫りにして支持を広げてきたが、「食の安全・安心」を前面に押し出す手法がここにきて裏目に出はじめた。一体何が起きているのか──。
石原慎太郎・元知事、浜渦武生・元副知事への証人喚問にワイドショーの関心が集まる中、築地市場関係者の間で注目されたのは日本テレビが3月17日〜19日に全国の有権者を対象に行った世論調査だった。「早く豊洲に移転すべき」が31%と、「移転を断念し築地を建て直すべき」の25%をはっきりと上回っていた。
昨年11月に現職幹部やOBの処分で終わった地下空間問題に加え、今年1月には豊洲の地下水モニタリング調査で環境基準の79倍のベンゼンなどが検出された。さらに世論調査の最終日の3月19日には環境基準の最大100倍のベンゼンなどが検出されたが、それでも「移転すべき」が凌駕していることは意外に受け止められた。
というのも1か月前、媒体こそ異なるが朝日新聞が行った世論調査(2月18〜19日)では「移転をやめるべき」が43%で「移転を目指すべき」の29%と反対の結果だったからだ。
有権者の反応は偶然ではない。この間に“逆転現象”を促すファクトが立て続けに明らかになった。
◆小池知事も認めた「法的に安全」
最大のポイントは、小池知事自身が14日、一問一答方式の都議会の予算特別委員会で、「(豊洲新市場は)法的に求められている点はカバーしている」と認めたことだ。土壌汚染対策法が求める対策を施して完成させた施設である以上当たり前だが、この点について小池氏が認めたのは就任以来、初めてのことだ(答弁を変遷させながら最終的に小池氏が容認するに至る当日の“ドラマ”については3月25日発売の月刊誌『WiLL5月号』で詳報した)。
小池氏は「法令を上回る措置を講じることが東京都の意思だ」と、法令では求めていない地下水の環境基準がまだ達成されていないことを強調したが、その言葉を繰り返すほど、皮肉にも、開場に向けた法的な条件は揃っていることが明確になるのだ。