放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、女子アナが女子アナのままでいることの難しさを考察。
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フジテレビの武田祐子アナが3月31日で退社。フリーに転身することが明らかになった。入社23年目、あと2か月で47才となる“アラフィフ”の決断だ。
出身は山形県山形市。山形大学の付属幼稚園からエスカレーター式で大学まで進み、同大学理学部生物学科卒という“リケジョ”の走りでもある。同期は、木佐彩子、富永美樹、男性は佐野瑞樹アナだ。
『笑っていいとも!』でタモリの横でウミガメの真似を完璧にやってのけたのを始め、看板番組『めざましテレビ』のMCほか、「彼女に仕事が集中しすぎている」と社内で問題視されたこともあったのは木佐。退社後も、もっとも成功している女子アナの一人であり、人気の高さやイメージの良さからCMや雑誌のタイアップ出演の仕事も多い。
そして富永は高校時代、『夕やけニャンニャン』の「おニャン子クラブ」オーディションに参加したタレント志向の強いタイプ。木佐を始め、人気アスリートとゴールインする女子アナが圧倒的に多いフジテレビにあって、ミュージシャンと結婚し、現在は夫婦揃ってバラエティー番組のヒナ壇に座ることも少なくない。
ちなみに佐野アナは、奔放な発言がバラエティーでウケ、私生活でバツ2であることも公表している、これまた、ある意味、フジテレビらしいライトなタイプの男子アナだ。
そんな同期の中で、正反対とも言えるタイプの武田祐子を採用した当時の担当者の気持ちはとても理解できる。
木佐や富永がルックスやキャラクターで勝負していたのに対し、武田アナは、自身最大の特徴ともいうべき“声”で勝負してきた。
それは、「武田祐子」で検索すると、いちばん上に「武田祐子 声」と出て来るほど視聴者にも御馴染みで、『もしもツアーズ』『馬の王子様』、そして『ゲームセンターCX』などのナレーションは、“アニメ声”とも言われ、ファンを増やしてきたのである。
「アナウンサー=美声」と言われた時代には居なかった「変わった声」「珍しい声」であり、同時に、声優のように“七色の声”を出せる稀有な女子アナ。
ドキュメンタリー番組のナレーションにも定評があり、系列局を含めた全アナウンサーのトップに輝いたこともあれば、ギャラクシー賞を受賞したこともある。
まさに、この“声”が、派手なタイプではない武田祐子アナを最後までアナウンサーで居させてくれた“財産”と言えよう。
他局でも、ベテラン女子アナが担当するストレートニュースや自己批評番組を武田アナも担当。その仕事ぶりは実に真面目で、馴染みのゲストに対しても、決して“なぁなぁ”になることはなかった。
テレビ局には「女子アナ30才定年説」はいまだに存在し、“肩たたき”にあう前に自分で決断し、30才を待たずにフリーになる女子アナは少なくない。いや年々多くなっているように感じる。
他部署への異動を言い渡されたことで退社する女子アナも昔から居て、その先駆け的存在は、武田アナの大先輩、フジテレビの岩瀬恵子アナだった。