ファッションはお金でもセンスではなく「ロジック」である。ゆえに、ロジックを学べば、誰でもオシャレになれる──。男性ファッションを感性から論理の世界に落とし込み、熱烈な支持を集めるMB(エム・ビー)さん。メンズファッションのバイヤーであり、オシャレになるためのサイト『現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法 KnowerMag』を運営、有料メールマガジンを配信するなど、ファッションの伝道師として広く活動している。
2月には、新刊となる『ほぼユニクロで男のオシャレはうまくいく スタメン25着で着まわす毎日コーディネート塾』(集英社)を上梓したMBさん。オシャレを始めたくなる新しい季節を前に、オシャレになるための“コツ”と“思考”を伺った(【前編】)。インタビュー【後編】では、独自の道を切り拓くMBさんのファッション観、仕事観に迫る。
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◆ドラッカーを学び、アパレルでバイトしながら発見したロジック
──メンズファッションをロジックで語る、というMBさんのファッションとの向き合い方が新鮮です。どのように生まれてきた考え方なのでしょうか。
MB:ファッションに興味を持ち始めたのは中学生くらいです。センスがいいとか、カッコイイって何だろうと考えるようになりました。ファッションは十人十色と考えられがちですが、実はそうではないんです。十人十色だったらオシャレという“総意”は存在しないはずだから。総意があるからには、オシャレの定理・法則が存在するだろうと思いました。
大学生になると、経済学部でドラッカーを学びながら、アパレル関係のバイトを始めました。バイトのくせに展示会に行って、デザイナーやスタイリストさんに、「オシャレって何ですか」って聞くんです。みんな感覚的なことを言うんですよ。でも、それをノートに書き出して読み込むと、同じことを言っていることに気づきました。言葉や表現方法はそれぞれ違うけれど、おおよそ「かちっとしすぎないで、崩しすぎないのがオシャレ」だと。たとえばグッチの元デザイナー、トム・フォードは、スーツ姿は、ネクタイを外したときに色気が生まれると言っています。
みなが同じことを言っているなら、定理・法則を導きだせると思ったんですね。それから10年くらいかけて、自分なりのロジックを構築し、今に至るという感じです。
──新刊では、「他人のために」洋服を着てみようと呼びかけているのが印象的でした。一方でオシャレは「自己表現」という考え方もありますよね。
MB:僕は誰とも喧嘩をしないので(笑)、自己満足のために洋服を着たい人は、それでいいと思っています。ただ、それが他人に褒められる服装かといえば、必ずしもそうではありませんよね。
大事なのは、何を目的に服を着るのか、です。自分の内面を表現するとか、好きなものを着るのが目的なら、それでいいんです。対して、褒められたいなら、自分のためではなく「他人のために」着なくてはいけないわけで、趣味を殺さないときもあるかもしれない。両立できれば一番いいのでしょうけど、どちらを優先するのかは、はっきりさせたほうがいいと思います。
そして、もしあなたが褒められたくて服を着るなら、オシャレには定理・法則があるからそれを意識すると確実ですよ、というのが、ブログや本で僕が言っていることなんです。
──例えば、最初のデートではどんなものを着るといいでしょう?
MB:女の子と初めてデートするときは、自分の趣味はそれほど追求しないほうがいいと思います。例えば最初に会うときは、白無地のシャツにして、2回目、3回目くらいから、趣味を入れていく。花柄が好きなら花柄を着るとか。
今日は誰のために服を着るのかを考えてほしいんですね。初めて会う人がいるなら、今日はその人のために着てみよう。気のおけない友達と飲みに行くなら、今日は好きなものを着ようとか。ときに自分のために、ときに人のために。これは社会で生きていくために、必要なバランス感覚だと思います。人は一人で生きているわけじゃありませんから。