「老眼」と並んで中高年の楽しい生活の大きな障壁となるのが「難聴」だ。日本補聴器工業会の発表(2015年)によると、国内の推定難聴者数は約1994万人、全人口の15.2%と試算されている。
難聴は、大きく2つのタイプに分類される。ひとつは「伝音難聴」と呼ばれるものだ。川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師がこう説明する。
「『テレビの音量を上げないと聞こえない』といったように、耳の中で音が小さくなってしまうのが『伝音難聴』の特徴です。
耳は、外から入ってきた音(空気の振動)を、その通り道である外耳や中耳で増幅し、内耳が電気信号に変えることで認識される。しかし、このタイプの難聴では、何らかの理由で音が外耳や中耳を通りにくくなる。『ガサガサ』、『ザー』といった、異物があるような低い耳鳴りがすることもある」
ただし、伝音難聴は治療がしやすいといわれる。
「中耳に炎症が起こる『中耳炎』や、感染症などにより耳の穴から中耳までが狭くなる『外耳道狭窄症』などが原因であることが多い。服薬や手術などで原因を取り除いて外からの音が内耳まで届くようにすれば、聴力は回復するケースが大半です」(同前)
伝音難聴を引き起こす原因には「耳垢」もある。笠井耳鼻咽喉科クリニックの笠井創院長が言う。
「耳垢は耳の中の老廃物と外から入ってきたホコリが混ざったものでできており、耳の中に虫や雑菌など異物が入ってくるのを防ぐ役割を持っています。
通常は新しい耳垢が発生すると、古くて余分な耳垢を耳の外へと押し出すのですが、高齢者になると新陳代謝が衰え古い耳垢を押し出す力が弱くなる。すると、たまった耳垢が耳を塞ぐ『耳垢栓塞』になり、伝音難聴を引き起こす。耳垢栓塞は、難聴をもたらすだけでなく、入浴後などに耳垢が水分を含んで膨張した際に耳に痛みを引き起こすこともある」