新築分譲マンションの人気を知るうえで、デベロッパーが謳う“即日完売”の広告やモデルルームに貼られた成約の「赤いバラ」を見たことがある人は多いだろう。だが、「即日完売のカラクリに騙されてはいけない」と指摘するのは、住宅ジャーナリストの山下和之氏だ。
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首都圏の新築マンションの販売は低迷が続いている。価格を抑え、販売戸数を抑えても契約率が上がってこない。今年に入って1月、2月と70%割れが続いている。供給も1000戸台から2000戸台と低調だ。
東京都や神奈川県の平均価格は年収の10倍を超えており、平均的な会社員ではなかなか買えない。そのため、価格の引き下げが必要なのだが、土地取得費は高くなるばかりで、建築費や高止まりしている。経費を削減するにも、人件費を下がるわけにはいかず、決して簡単でない。
残る手段は専有面積の圧縮になる。今年2月の首都圏新築マンションの平均は67.98平方メートル。昨年2月は69.14平方メートルだったから、1平方メートル以上狭くなっている。この傾向が今後も加速されることは間違いないので、注意が必要だろう。
それでも、昨年までは人気物件の即日完売も決して珍しくなかった。東京建物の「Brillia Towers目黒(ブリリアタワーズ目黒)」や「Brillia Towers上野池之端(ブリリアタワー上野池之端)」がその代表格。販売戸数が100戸以上でも倍率2倍以上で売れるケースもあった。
とくに、都心の人気エリアでは平均価格1億円前後でも、100戸以上が即日完売した。一昨年のブリリアの目黒は、平均1億円超えでも、661戸が平均倍率4.1倍を記録したほどである。都心では、三井不動産レジデンシャルの「パークコート赤坂檜町ザ タワー」が平均2億円台でも1.9倍を記録した。
一方、郊外物件でも価格の割安感などから、大規模物件でも即日完売があった。その代表格が大和ハウス工業の「プレミスト高尾サクラシティ」。第1期の130戸から最終期7期まで即日完売を続けた。
しかし、昨年後半あたりから、そうした大型の即日完売は陰を潜めている。せいぜい20戸、30戸までで、なかには数戸単位の即日完売もみられる。無理やり、帳尻合わせで即日完売を作り出して、ユーザーにアピールしようとしているのだ。
そもそもデベロッパーは即日完売とうたえれば消費者に強くアピールできるので、何とか即日完売をつくろうとする。