芸能

NHK『べっぴんさん』大団円 「なんか、なんかなー」の評価

ヒロイン・坂東すみれを演じた芳根京子

 大団円を迎えたNHKの「連続テレビ小説」、作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が総括した。

 * * *
 芳根京子さんがヒロインの朝ドラ『べっぴんさん』も本日いよいよ幕を閉じました。タイトルの「ぺっぴん・別品」の意味は、「特別によい品物」。戦後の焼け跡から出発し、昭和20年~60年代という激動の時代を背景に、神戸「キアリス」という子ども服メーカーが服作りにまい進する物語。

 スタート当初、主人公・坂東すみれの実在モデルが、子供服メーカー「ファミリア」の創業者・坂野惇子さんと聞いて、期待は大きく膨らみました。激動の時代の中できっちりと企業理念を保ち、質の良い子供服を丁寧に創りあげていく女性創業者の格闘ぶりが、神戸の街の魅力とともに描かれるのだろう、と。

「格別に素晴らしい、愛情のこもった子供服」を世に出し、親と子が服に込められた夢や勇気を分かち合う……多くの視聴者がそんな物語を想像していたのではないでしょうか。

 しかも、制作はNHK大阪が担当。『カーネーション』『あさが来た』と、これまで女性主人公×仕事ドラマにおいて輝かしい成功事例を生んできた制作陣。過去の秀作のイメージと重ねつつ、期待を抱いたのはまあ自然なことでしょう。

 そして今、半年間のドラマを見終えた印象は……すみれの口ぐせのフレーズそのもの。

「なんか、なんかなー」

 一言でいえば、「キアリス」という企業の仕事ぶり、ものづくりへのこだわり、仕事と人、仕事と社会、仕事と街との関係について、描写が極端に少なくてものたりなかった。

 ものづくりとは何か、手間のかけ方、独特の企画やデザイン、仕立ての工夫といったことが、オママゴト程度には描かれていたけれど、プロの仕事としてリアルに伝わってこなかったのです。

 むしろ印象に残ったのは、家族や仲間内のゴタゴタ。夫婦げんかに嫁姑のグチ、娘の恋愛事件、家出。人が集まればどこにでも生じそうな小エピソードに多くの時間を消費していました。

 時代背景についても、そう。敗戦後の廃墟から高度経済成長、経済大国へと成長していくこの時期、資本主義社会の豊かさと歪みが露呈した激動の時代なのに、そのあたりがさっぱり伝わってこない。さすがに途中で時代性を無視するわけにもいかないと考えたのか、唐突に大阪万博の実写映像が入り始めました。

 まあ、無いよりはいいのかもしれないけれど、もっと時代が大きく変化していく描写もできたのでは?

関連記事

トピックス

第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
(撮影/田中麻以)
【高市早苗氏独占インタビュー】今だから明かせる自民党総裁選挙の裏側「ある派閥では決選投票で『男に入れろ』という指令が出ていたと聞いた」
週刊ポスト
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン