「素晴らしいし、喜ばしいこと。年齢にかかわらず何らかの問題で不妊に悩む夫婦にとっての希望です。体外受精で踏みとどまっている人に、私は卵子提供を勧めたい。もっと早くやっておけばよかったなと今でも思います。匿名でもなんでもいいんです」
東京・永田町の議員会館にある事務所の応接室。野田聖子議員(56才)は迷いなくこう言い切った。
2010年にアメリカで卵子提供を受け、真輝くん(6才)を出産した彼女にとって、見過ごすことのできないニュースだったのだろう。
3月22日、NPO法人「卵子提供登録支援団体(OD-NET)」が匿名の第三者の卵子提供で女性が妊娠・出産したと発表した。
「OD-NET」が卵子提供者の募集を始めたのは2013年。匿名の卵子提供による出産は国内初の事例となる。
日本では第三者の卵子提供は法的準備がない。2003年に厚生労働省の審議会は、匿名の第三者からの提供で無償の場合など限定的な条件で提供を認める報告書をまとめたが、国会提出には至らなかった。
そのため、海外で卵子提供を受けようと年間1000人近い女性が渡航しており、日本で生まれる子供は年間300~400人にも上る。海外での卵子提供は医療費だけで100万~500万円。さらに渡航費、滞在費、ドナーへの謝礼などで、1000万円を超えるケースもある。
同団体の代表・岸本佐智子さんが語る。
「出産されたと聞いた時は涙があふれました。今回の意義は非常に大きい。国内で、しかも通常の体外受精と同じような費用や環境で授かることができるのは大きな進歩です。卵子がなく不妊に悩む女性に、卵子提供という“産み方”が選択肢にあってもいいと思います」
「OD-NET」では35才未満で子供のいる女性という条件で、卵子提供者を募っている。提供者と被提供者に3回以上のカウンセリングを行い、倫理委員会の承認を受け、卵子提供者に感染症がないかなどの検査を行う。提供者の最後の血液検査に問題がなければ、ようやく移植に踏み切れるのだ。
匿名の理由について、前出の岸本さんはこう語る。