体外受精の治療費は1回50万円、45才以上の出産率はわずか1%。採卵、服薬、注射、検査、結果発表を繰り返し、夫婦は心身ともに疲弊していく。それでも不妊に悩む夫婦はこの治療に一縷の望みを託すしかなかった。3月、国内初となる匿名の卵子提供による出産が発表された。
不妊治療を受ける彼らの希望の光となるのか…2010年に卵子提供を受けて妊娠・出産した野田聖子議員(56才)が、今回の匿名卵子出産への思いを語った。日本でいち早く卵子提供に挑んだのが野田議員だった。
41才から14回にわたり不妊治療を受けた。1日に3回の服薬、ホルモン分泌を促す注射、加えて地元・岐阜と東京を行き来する多忙な議員生活。流産も経験し、一時は「もう死ぬしかない」と考えるほどの苦悩を抱えた。
体外受精での妊娠・出産率は、45才以上の場合わずか1%。
「でもその1%にかけちゃうんだよね。医師も周りも無理だって言ってくれないから終わりが見えないの」(野田議員)
昨年、国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第15回出生動向基本調査」によると、子供のいない夫婦のうち28.2%に不妊の検査や治療の経験があるという。
「日本が間違っているのは、体外受精でほとんどの夫婦が足踏みをしていること。1回約50万円もする体外受精を何度も受け続ければ、そのうちお金はなくなる。通院しながら働くことが難しくなり、夫婦仲は悪くなる。でも他国は数回体外受精をしてできなかったら、次は卵子提供をやりましょう、養子縁組をしましょうって親になるプロセスをちゃんと作ってくれている。
日本の不妊治療は次のステップがない。日本では“血を分けた子じゃないと自分の子じゃない”という考えが強いので不妊治療からなかなか卒業できない」(野田議員)
2008年に交際を始めた7才年下の一般男性の勧めで卵子提供に踏み切った野田議員は、州法で認可されているアメリカのネバダ州へ飛んだ。