ドナルド・トランプ米大統領の娘婿で、大統領上級顧問を務めるジャレッド・クシュナー氏の親族が経営する不動産会社「クシュナー不動産」と中国有数の保険会社「安邦保険」グループの間でのニューヨークでの不動産共同開発の交渉が終了したことが分かった。米金融・経済通信社「ブルームバーグ」が報じた。
この案件はクシュナー不動産がニューヨークの一等地に所有するマンハッタンの5番街の41階建て「5番街666ビル」の再開発計画で、両者は昨年後半から交渉を続けていたもの。同不動産のスポークスマンが「クシュナー不動産は今後、安邦保険と交渉を行わない。両者は不動産開発計画についての交渉を終えることで合意した」と発表した。事実上の交渉決裂とみられる。
開発計画については、米議会からも大統領上級顧問のクシュナー氏の親族が中国の民間企業と経済的な関係を深めることについて、「道義的な面での懸念」が表明されており、トランプ政権への政治的影響を警戒したクシュナー側が中国企業との交渉を打ち切ったもようだ。
クシュナー不動産はクシュナー氏の祖父が創業者で、祖父の死後はクシュナー氏の父親が会長の座を継いだが、クシュナー氏が大学院生のとき、父親が脱税で懲役2年の刑を受けたことで、クシュナー氏が同社の会長となっていた。
ところが、義父のトランプ氏が大統領に当選したことで、クシュナー氏は会長を辞任し、同社の重役が会長に就任。これにともない、同社と安邦保険との交渉は新経営陣が引き継いでいた。とはいえ、同社にはクシュナー氏の影響力が根強く残っていることや、中国の場合、民間企業でも中国共産党の影響を強く受けていることから、中国側との交渉が成立すれば、開発計画に伴う経済的関係が政治的に利用されることが懸念されていた。