放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、ファッション界のレジェンド、コシノ3姉妹にクローズアップ。
* * *
3月末、3姉妹全員が日本を代表するファッションデザイナーである、コシノヒロコ氏、コシノジュンコ氏、コシノミチコ氏が出生地、大阪岸和田に揃った。2006年3月26日、92才で亡くなった母、小篠綾子さんの墓参りのためだったという。
その綾子さんの半生を描いた連続テレビ小説『カーネーション』(NHK)が、尾野真千子(晩年は夏木マリ)主演でオンエアされたのは2011年のこと。その際も、娘たちは母の生き方共々注目されたものだが、いままたコシノ姉妹に注目が集まり、何度目かのブームを迎えているとファッション関係者は指摘する。
現在、『KHギャラリー銀座』にて、「金子國義×コシノヒロコ EROS2017」なる展字が開催されている(5月7日まで)。これは、ファッションデザイナー以外に、アーティストでもある長女、ヒロコ氏と、絵画のみならず、着物デザイン、写真、歌舞伎舞台の美術なども手掛けた金子氏が、文字通り、エロスを掛け合うというもの。ヒロコ氏は、春画から生まれた油彩画と人物画シリーズを初披露している。
“本職”では、3月、恵比寿ガーデンホールにて2017秋冬コレクションを開催。KHギャラリー共に、幅広い年代の有名人が駆けつけた。
今年1月、傘寿を迎えたヒロコ氏だが、昨年はゴルフでホールインワンを記録。ヒロコ氏と20年来の付き合いがあるという芸能関係者は、「とにかくお元気だし、何事にも精力的。この年齢になってもネットワーキングに熱心で、どんな人にも分け隔てなく丁寧に接してくださる方」と、その人柄を教えてくれた。
件のコレクションで、顧客やマスコミを仕切っていたのは、娘のコシノユマ氏。コシノ3姉妹の末妹、コシノミチコ氏のブランド「ミチコロンドン」のアシスタントデザイナーを経て、母・ヒロコ氏のデザインオフィスに入社。98年には「ユマコシノ」ブランドをスタートさせ、海外の映画祭で賞を獲得した『ホテルチェルシー』の衣装担当などの活躍も話題になった。
つまりユマ氏は、コシノブランドの後継者。日本の著名なファッションデザイナーの多くが後継者を残せていないなか、叔母・ミチコ氏やジュンコ氏、そして祖母・綾子さんの世界観を受け継ぐ、貴重な存在なのである。
そしてジュンコ氏は、陸上自衛隊の「特別儀仗隊」の制服デザインを監修したことが話題になったばかり。実に52年ぶりの刷新だといい、報道陣に公開された制服は、現行のタイプとは異なり、詰襟。夏服は白、冬服は紺で、日の丸を表す赤いラインがあしらわれている。
さらにジュンコ氏は、思わぬところで、その名が取沙汰されている。それは、早くも、今年最大のブレイク芸人と評価され、テレビ番組から引っ張りだこで、桐谷美玲主演の新ドラマ『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)で女優デビューを果たす女ピン芸人、ブルゾンちえみが関係している。彼女が「キャリアウーマン」に扮してネタを披露するときの、あの特徴的なメイクは、コシノジュンコ氏を手本にしているのだ。