いまでは韓国の日常的光景となった「反日」や「法より民意という社会」。約40年間、韓国をウオッチし続けてきた産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が、民主化によって秩序が崩壊する韓国社会のおかしな事象をレポートする。
* * *
韓国では民主化とは「法より民意」である。メディアを挙げて「これが本当の民主主義だ」といって自画自賛している最近の「100万人ロウソク・デモ」も、代議政治無視の「法より民意」の発想である。
法は秩序だが、民主化は民意優先だから秩序も崩れる。その象徴がソウルの中心部にある「光化門広場」を“占拠”している不法テント村。「セウォル号沈没事故」の犠牲者支援と称し、朴槿恵政権非難を続ける反政府派の座り込みテントだ。これも「民意」への配慮から撤去できない。民主化が韓国社会全体に無法現象を生んでいるのだ。
もう一つの反日・愛国シンボルである竹島・独島問題は、1965年の日韓国交正常化の際、ある種の棚上げ論として“現状維持”で合意していたのが、民主化による過去否定で韓国は領有権強化という“現状変更”に突っ走ってしまった。
日常生活でも民主化による韓国社会の“変化”は目に余る。長年のウオッチャーにいわせれば、以下もまた伝統的な秩序の崩壊である。
筆者はソウルの若者街「新村」に長年住んでいるが、近年の若者風景の激変ぶりには愕然だ。
ある時、昼間の通りで20代とおぼしき若い男女が大声で口ゲンカしていた。こういう場面は外国人記者の文化人類学的関心をそそる。「争点は何かな?」と近づいて耳を傾けたところ、突然、男がこちらに向かって「何を見てやがるんだ! あっちへ行け!」と叫んだ。
これには驚いた。筆者は白髪の老紳士(!)である。言語、つまり言葉使いにはことのほか「長幼の序」が厳しい韓国で、年輩者にこんな物言いは本来は絶対にありえない。若い男にこんな物言いをされたのは40年近い韓国暮らしで初体験である。民主化でついに伝統的な年齢文化(秩序)さえ壊れてしまったのだ。