誰が呼んだか、「多刀流」。実に言い得て妙だ。第89回選抜高校野球大会に出場した大阪桐蔭の2年生、根尾昂(ねお・あきら)のことである。
背番号「7」の根尾は、1回戦では遊撃を守り、大量リードした試合終盤は中堅の守備についた。2回戦の静岡戦でも序盤は遊撃を守ったが、競ったゲームの火消し役としてマウンドにも上がり、8回、9回を零封して勝利に貢献した。
「甲子園は不思議なところでした。(いろんなポジションで出場して)全部、楽しいです」(根尾)
史上初の選抜決勝大阪対決を実現した今年の大阪桐蔭の2年生には、来秋のドラフト1位になりうる逸材が4人も5人もズラリと並ぶ。中でも出世頭が根尾なのだ。飛騨高山で生まれ育った彼は、中学時代に既に146キロを記録。スキーの回転で中学生日本一になった経歴も持つ。両親が共に医師という家庭に育ち、勉強の成績も優秀だ。
すべてをそつなくこなす大人びた選手であるため、先輩の3年生たちは彼を「根尾さん」と呼ぶらしい。
野手の注目株は、昨夏、1年生ながら根尾と共にベンチ入りした中堅手の藤原恭大だ。西谷監督が「根尾もかなり速いが、藤原はもっと速い」という俊足(50メートル5秒8)。一発もある。
「目標とする選手は、(走攻守)三拍子揃った柳田悠岐選手です」(藤原)
同級生のエース格が横川凱(かい)だ。190センチの長身左腕で、角度のある140キロオーバーの直球と、スライダーを武器とする。ただ、2回戦では初回に5失点(自責4)。1死しか奪えずマウンドを降りるホロ苦デビューとなった。