銅像は、一度建てられると動かすのは容易ではない。それが政治的意図を伴うものなら、なおさらだ。その場は、運動者たちの「拠点」になる。韓国人による慰安婦像設置がもたらした混乱は、説明するまでもない。さらに、いま、新たなモニュメントが設置されようとしているのをご存じか。その名を、「徴用工像」という。ジャーナリスト・竹中明洋氏がレポートする。
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観光客で賑わう京都中心部から北に1時間。数寄屋建築に重用される北山杉の産地を過ぎ、山中をさらに進むと目指す施設があった。「丹波マンガン記念館」。かつて丹波地方に300もあったマンガン鉱山の1つをそのまま保存しており、坑道の中に入るとリアルなマネキンで採掘の様子が再現されている。
記念館の敷地にやや場違いな印象を与える真新しい銅像があった。肋骨が浮き出るほど痩せこけた上半身裸の男性が、右手に鶴嘴(つるはし)を持ち、左手を頭の高さまで上げる。肩には小鳥が止まっている。
この像が設置されたのは、昨年8月のことだ。韓国の二大労働組合である全国民主労働組合総連盟(民主労総)と韓国労働組合総連盟(韓国労総)の幹部らが訪れ、韓国から持ち込んだ像を設置した。
組合員が集めた1億3400万ウォン(1300万円あまり)の基金で設置されたこの像のことを韓国側は「強制徴用労働者像」と呼ぶ。日本側が言うところの「徴用工」の像である。
韓国では、日本の植民地時代に多くの労働者が強制的に徴用され、日本各地で過酷な労働を強いられたとの主張が展開されている。だが、「国家総動員法」に基づいた「国民徴用令」が朝鮮半島でも適用されたのは、1944年9月からで、それまでは民間の募集と「官斡旋」が主体である。