<一夫一妻制>ではなく、<事実婚>こそ、いまの時代にふさわしい──。日本の少子化の原因は現在の「結婚制度」にあるとして、新しい家族のあり方を提示する藤沢数希氏の『損する結婚 儲かる離婚』(新潮新書)が話題を集めている。少子化対策のためのみならず、男女ともが真に自由に、愛に生きるために、<事実婚>という選択肢があると説く藤沢数希氏のインタビュー。【後編】では、結婚制度の欠陥から、現代の平和な一夫多妻制の在り方までを聞いた。
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■デキ婚や離婚のように、<事実婚>が市民権を得る可能性はある
──藤沢さんは日本社会が<事実婚>へと堰(せき)を切るためにこの本を書いた、と仰いました。まず、藤沢さんが想定されている<事実婚>ってどういうものですか?
藤沢:一対一で付き合っているカップルが籍を入れずに一緒に暮らし、子どもが生まれて家族になるパターンもあれば、女性がいわゆる愛人という形で男性と暮らすなり、あるいは別居はしていますが子どもを産むパターンもあります。いま、こうした事実婚を妨げる法律は一切ありません。数年前までは、非嫡出子の相続は嫡出子の半分、という差別的な法律が唯一残っていたのですが、これも当然のように撤廃されました。
──とはいえ日本では事実婚の状態で生まれた子ども、つまり婚外子の比率は2%程度です。フランスの約60%をはじめ、40~50%が多いヨーロッパに比べると、異常な低さです。なぜだと考えますか?
藤沢:法律上の問題ではないのだから、文化的な要因が大きいと思います。本に書きましたが、韓国や香港も少ないので、アジアに共通する価値観なのかもしれません。しかし、「みんながやれば自分もやるし、みんながやらなければ自分もやらない」という単純な話なのかもしれません。僕は海外で暮らしていたし、外資系企業にいたから、日本の同調圧力や世間体を気にしたことがないのですが、日本に生まれてずっと日本に住んでいると、みなと同じ、が大事なのだな、と人々を観察していて感じます。
裏を返せば、みながやり出したら、一気に広がる可能性はある。例えばできちゃった結婚って、10数年前までは隠さないといけないようなことだったけど、いまや市民権を得ましたよね。むしろ、子どもができないのに結婚するの? と言われてしまいます。離婚も3人に1人がする時代、バツイチは必ずしもネガティブな言葉ではなくなりました。ふつうの公立の小学校なんか覗いてみると、シングルマザーの家庭はぜんぜん珍しくない。
社会は徐々に変わるのではなく、ある時点を境に、急激にガラリと変わるのだと思います。影響力のある著名人やスポーツ選手が堂々と事実婚を宣言するなどしたら、急に事実婚がふつうになるかもしれない。まずは、この本が家族の多様性を広める、一つのきっかけになれば、と思います。