『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京系)で、“国宝級”と評価された「曜変天目茶碗」をめぐる真贋論争が泥沼化している。
そもそもの発端は2017年2月3日号の本誌・週刊ポストのスクープだった。同番組に持ち込まれた茶碗が南宋時代の「曜変天目茶碗(*)」と鑑定されたことに、陶芸家の九代目・長江惣吉氏ら専門家が続々と「偽物だ」と異議を唱えていることを報じたのだ。
【*曜変天目茶碗はこれまで世界で3点発見されており、いずれも国宝に指定されている】
曜変天目の最大の特徴は、見る角度によって様々に変化する茶碗内側の鮮やかな光彩だ。しかし長江氏は、「鑑定団で紹介された茶碗には光彩はなく、宋時代にはなかった化学顔料が使われている」と推測していた。
しかし本誌報道後、大きな動きがあった。所有者である徳島県のラーメン店主の依頼を受け、奈良大学の魚島純一教授(文学部文化財学科)が、“疑惑の茶碗”を調査したのだ。X線を照射し、使用された塗料の成分を検出する。
その結果、「検出された宋時代以降の塗料の成分はわずかで、それだけでは偽物と特定できない」というものだった。この結果に前出・長江氏は納得していない。
「私は奈良大の研究結果を取り寄せたのですが、宋時代以降の塗料の成分は『ごくわずか』と書かれているのみで、含有量の数字がなかった。少しでも含まれているなら偽物の可能性がある」
一方の奈良大・魚島教授はこう反論した。
「私が行なった『定性分析』とは、『成分の有無』を調べる目的のもので、おおまかな量はわかっても、具体的に数値が出せない。そもそも私はこの茶碗の真贋に言及していません。調査でわかったことは、偽物だと主張する人が指摘したような顔料・釉薬が使われていないということのみです」