森友学園疑惑が盛り上がれば盛り上がるほど、自らの失策やスキャンダルが忘れられたと得をする人たちがいる。築地市場の移転問題で旗色が急速に悪化した小池百合子・東京都知事や、南スーダンPKO部隊の日報を隠していたことが発覚した防衛省、天下り問題で大量の処分者を出した文部科学省や飛び火を受けた外務省などだ。政界を見ると、森友疑惑の炎上で急に元気になっているのが麻生太郎・副総理兼財務相だ。
財務省は国有地格安売却疑惑の本丸であり、麻生氏の側近中の側近、鴻池祥肇・参院議員と籠池氏の接点も明らかになった。それにもかかわらず、麻生氏は政治家の関与について、
「いろんな陳情を聞き、近畿財務局につないでやるのは普通のこと。それをするのが仕事の一つだ」
と平然といってのけた。潔白を証明しようと躍起の安倍首相とは対照的に余裕綽々(しゃくしゃく)。首相のあがきを“高みの見物”しているようにも見える。
永田町では、万が一、安倍政権がこの問題で大打撃を受けて退陣となった場合、麻生氏の首相返り咲き説が取り沙汰されている。しかし本人は親しい政治家に「別れた女房(首相の座)とは一緒にならないよ」と笑い飛ばしたという。
「麻生さんの狙いは返り咲きではなくキングメーカーの座。そのために麻生派の勢力を拡大し、岸田派や谷垣グループと合併して党内最大派閥をめざす大宏池会構想を進めている。一強状態だった安倍首相がダメージを負って弱体化するのは好都合じゃないか」(自民党額賀派幹部)
森友学園に便宜を図った疑いが濃厚なのに国会で「法令違反はない」「記録は破棄した」と知らぬ存ぜぬを押し通している財務省の高官たちも内心では笑っているようだ。