盧武鉉政権以来、約10年ぶりの左派・革新政権が韓国に誕生しようとしている。現職大統領の失職という異常事態、未曽有の政治混乱が続く韓国社会の行く末を、ソウル駐在歴40年の黒田勝弘氏が占った。
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朴槿恵大統領の弾劾・罷免で、10年続いた右派・保守政権が崩壊した。その結果、5月に誕生するはずの新政権は、野党勢力の左派・革新系に握られることがほぼ確実になった。この右から左への権力移動は、韓国現代政治に関する筆者のかねてからの「10年周期説」を裏付けるものだ。
韓国は1987年の民主化選挙以来、30年間に6人の大統領が誕生している。その間、2人で10年ずつ右、左が交代してきた。今回、周期にしたがって左派・革新政権が誕生すれば、金大中・盧武鉉政権(1998─2008年)以来、10年ぶりということになる。
ここで仮に、支持率トップを独走する「共に民主党」の文在寅政権が誕生するとして、その左派・革新体質を展望するには金大中・盧武鉉政権を振り返ることが手っ取り早い。文在寅氏は盧武鉉の長年の部下で秘書室長だった。いわば“ミニ盧武鉉”である。そこでまず、盧政権下で何があったかおさらいしておく。
その前に、文在寅氏については先年こんな風景があった。産経新聞の加藤達也元ソウル支局長が朴槿恵大統領に対する名誉毀損事件で起訴された時のことだ。最大野党の「共に民主党」代表だった彼が外信記者クラブで記者会見をした際、筆者は「産経新聞の記者だが……」といってこんな質問をした。
「今回の起訴をどう思うか。盧武鉉政権時代、私(黒田)も記事が気に食わないといって大統領官邸から排除されたことがある。あなたの言論観を聞きたい」
答えは「起訴はよくない。言論の自由は民主主義国家として守られなければならない。私は(政権を取れば)言論の自由を保証する」という平凡なものだったが、冒頭でわざわざ「われわれは産経新聞は好まないが……」と前置きした後、そう答えたのだ。